あなたがやれば、脱税です
   
作成日:06/20/2005
提供元:今村仁税理士事務所
  


■■■ 解説 ■■■

南青山って聞いて、どんなイメージをもちますか。
最先端のファッション、コムデギャルソン、カルバンクライン、プラダやフロムファースト。まー日本のファッションの中心地ですよね。

その表通りから一本路地を入ったところ、行ったことあります?
行ってみるとわかりますが、非常に豪華で閑静な高級住宅街が広がっています。
そんなみんなが羨むような南青山の、びっくりするほどの低家賃の物件をご紹介します。

2004/06/17 今村不動産情報より
 
場  所 南青山5丁目、地下鉄表参道駅から徒歩二分、
     フロムファースト通り1本裏手
     青山通りから直線距離で約200m
建  物 鉄筋コンクリートの4階建て33戸、築6年
面  積 平均世帯面積100平米
相場家賃 相場家賃としては、月額50万円超
 
実際家賃 66,000円也
(注)ただし、公務員住宅に限る。
 

注書きまでちゃんと読んでくださいね。(笑)
公務員住宅として、南青山に実際に今も存在しています。
月額66,000円で3LDK・100平米のマンションに公務員が住んでいます。

賃貸住まいの方は今支払っている家賃と、比べてみてください。
どうです?
疑問が湧いてきました?

■公務員住宅とは?

先ほどの例の建物の名称は、「南青山住宅」といいます。
財務省関東財務局管轄の公務員住宅です。

公務員住宅は、1949年に施工された国家公務員宿舎法という法律によって規定されています。現在の住宅数は、全国で約243,000戸(平成13年9月現在)。
国家公務員宿舎法が施工された1949年というのは、戦後まもない時期です。当時は、公務員の給与は民間企業に比べて低い状況にありました。また、住宅事情も悪かった。

そのために法律を整備して全国を転勤で渡り歩く国家公務員の生活を助ける宿舎を作ることになりました。これがそもそもの経緯。

しかし現在は、給料は逆転し、民間はリストラの一環として、社宅をどんどん減らしています。また、住宅事情は大幅に改善しました。

■増え続ける公務員住宅

民間では、売却し続けてきた社宅。
その中で、実は公務員住宅だけは増え続けています。

1例。
平成10年度、関東財務局管轄内だけで9ケ所が建て替えられました。
予算は、なんと78億円。
国有地に建てられていますので、建物値段だけで、ですよ。

全国のマンションが建て替え問題で頭をかかえているのに。
いとも簡単に税金で済ますとは。。。。

■公邸22棟のゆくえ

都内にはかつて公邸と呼ばれた建物が22棟存在していました(といっても、今も存在しているのですが、、、)。総理大臣や官房長官、他には、官僚のトップもここに住んでいました。

国民に選ばれた政治家が住むのは、わかるのですが、なぜ公務員(官僚)の面倒まで我々の税金で見ないといけないの? と不思議に思います。

■官僚の悪知恵

1998年、小渕内閣はそれまでの橋本内閣から180度政策を転換して、積極財政に舵を切りました。
当然そのためには、余分な財産があればそれを処分するのが原則、ということで、

1.国有財産の売却方針を閣議決定
2.都内の公邸も原則売却

しかし、しかし、事実として、2003年1月時点で売却された公邸なし。
公邸の処分に関する内部資料をみると、その理由が明らかに。
内部資料には、「売却又は転用」、と。

つまり、公邸から公務員住宅に転用した、というのです。それで、極端に安い家賃で今も変わらず住んでいます。ここにも、公務員住宅をうまく使った官僚の悪知恵が存在します。

■では、66,000円の根拠は?

ちょいと、最初の南青山の話に戻して、家賃66,000円の根拠も述べておきましょう。
公務員住宅は、すべての住宅をAからEまでの5つのランクに振り分けられます。そして、例えば、Aランクだと家賃約1万円、Eランクだと約6万円となっています。家賃は、築年数と広さをもとに一定の算式により計算しますが、立地は影響しません。

つまり、南青山であろうが、北海道であろうが築年数と広さが同じであればほぼ同額の家賃となるのです。

■当の本人は?

ここに、財務省の方のインタビューがあります。

記者
「そもそもなぜ公務員住宅が必要なんですか」

財務省の方
「公務員住宅は法律に基づいて整備されています。国家公務員は日本全国に転勤するため、安定的な行政サービスを行う必要があるからなんです。」

記者
「都心部の家賃50万円相当の物件が7万円というのは、私たちからすると不公平感があるのですが。」

財務省の方
「深夜まで業務のある方がいますので、そのため都心にも宿舎が必要なのです。家賃は民間の社宅と同水準です。」

民間でも当然、残業はあるわけで、、、
南青山3LDK・100平米が66,000円で、同水準??

■現物給与というもの

ここまで色々と、不公平感をお話してきましたが、実は私が特に言いたいのは、税制上の問題なんです。

税制上、現物給与(フリンジベネフィット)というものがあります。
これは、現金で給与として支給したものではないが、例えば、会社が一部の役員や従業員のために、スーツなど(現物)を提供した場合などです。

この場合は、そのスーツ代を会社から従業員への給与として、課税します。
つまり従業員は、その分の源泉所得税を給与から引かれるのです。当然その分、手取りが減ります。
社宅の場合も同様です。ですから民間の場合は、現物給与にならないように家賃設定をします。

国税庁の言葉を借りると、
「民間の場合は、実際払っている家賃と相場の間に差がある場合は差額に課税されます。」

■私がやれば、脱税です。

詳細は割愛しますが、この場合の相場家賃とは、南青山付近では相場家賃の80%ぐらいらしいです。
そうすると、民間相場50万円×80%-66,000円=33万4,000円
年間に直すと、約400万円。
これが課税されるべき年間の金額です。

これに例えば、税率30%をかけると、、、120万円の脱税なーり。

しかし、しかし、国家公務員宿舎であるがゆえに、お咎めなしなんです。
さきほどの国税庁の言葉の冒頭をもう一度見てください。「民間の場合は」となっているでしょう。トホホ。

民間相場50万円のマンションにたった66,000円で、私が住めば又はあなたが住めば、脱税です。
しかし、官僚が住めば、問題なーし。

憲法では確か、法の下の平等を言っていたはずが。。。
福沢諭吉は、天は人の上に人を作らず、、、

■税金をもらう人

南青山のように豪華な公務員宿舎に低家賃で住める高級官僚は、やっぱり「税金をもらう人」。