プロが見て、ちょっと気になる平成25年度税制改正
   
作成日:03/01/2013
提供元:マネーコンシェルジュ税理士法人
  


今回の平成25年度(2013年度)税制改正大綱は、非常に大型で内容が多岐に渡りそれぞれの内容も濃いものであるという特徴があります。

しかし、一般的に報道されている改正項目以外にも、ちょっと気になる内容がありますので、今回はそのご紹介をします。


■社会保険診療報酬の所得計算の特例の縮小

社会保険診療報酬の所得計算の特例について、次の措置を講ずる(所得税、法人税、住民税について同様)。
1.適用対象者からその年の医業及び歯科医業に係る収入金額が7,000万円を超える者を除外する。
(注)上記の改正は、個人は平成26年分以後の所得税について適用し、法人は平成25年4月1日以後に開始する事業年度について適用する。

いわゆる概算経費についてですが、現行は、「社会保険による診療報酬が年間5,000万円以下の場合について適用可能」となっています。

しかし上記にあるように、今回の改正では、これを社会保険診療報酬に限定せず収入金額年間7,000万円以下としています。

つまり、自由診療が多い場合には、今回の改正により、今後概算経費が使えなくなるということです。

もちろん、増税項目です。


■サービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る特例措置の延長等

1.サービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る固定資産税の減額措置の適用期限を2年延長する。
2.一定の新築のサービス付き高齢者向け賃貸住宅について、一定の新築住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置及び一定の新築住宅の用に供する土地に係る不動産取得税の減額措置の床面積要件の下限を緩和する特例措置の適用期限を2年延長する。

サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度の適用期限を3年延長するとともに、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に取得等をしたものの割増償却率を14%(耐用年数が35年以上であるものについては、20%)(現行28%(耐用年数が35年以上であるものについては、40%))に引き下げる。

いわゆる、「サツキ」や「サ高住」などと呼ばれている「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」関係の減税特例が、おおむね延長されるという内容です。

不動産関係や金融機関関係のお仕事をされている方には、重要な情報かと思います。


■株式等に係る譲渡所得等の分離課税の改組

株式等に係る譲渡所得等の分離課税について、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場株式等に係る譲渡所得等を別々の分離課税制度とした上で、(1)特定公社債等及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税と(2)一般公社債等及び非上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税に改組する。

今までは、中小企業の自社株を売買して売却益が出た場合に、その節税対策として、既存の上場株の売却損を使って損益通算するということが行われていましたが、今後はダメということになりそうです。


■私募債を利用した節税策封じ

一般公社債等の利子等については、20%源泉分離課税を維持する。ただし、同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものは、総合課税の対象とする。

これも今まで中小企業で行われていた節税対策封じと読めます。

今までは、同族会社発行社債利子は、受け取る個人において20%源泉分離課税でした。

これが今後、総合課税の対象となるということは、高額所得者が受取人の場合は、最高50%の税率がかかることになります。


■死亡保険金の非課税枠は堅持

隠れた減税措置としては、「工事請負契約書や不動産譲渡契約書に係る印紙税の大幅引き下げ」、「領収書等に係る印紙税の非課税金額の引き上げ(3万円から5万円に)」などがあります。

一方、以前、社会保障・税一体改革において記載のあった「死亡保険金における相続税の非課税措置の厳格化」は今回の大綱には盛り込まれていません。

つまり、今のところ、相続人が保険金を受け取った場合には、「500万円×法定相続人数」まで非課税となります。


(注)今回の内容は、国会を通過するまでは正式な決定事項ではありません。今後の動向によって、内容が変更になる可能性がありますのでご注意下さい。