ザ・犬税
   
作成日:12/09/2005
提供元:今村仁税理士事務所
  


■■■ 解説 ■■■


■犬に対して税金!?

政府の平成15年における「動物愛護に関する世論調査」によると、ペットとして飼っている動物ベストスリーは、
1位 犬 62.4%
2位 猫 29.2%
3位 魚 11.7% (複数回答)
となっています。

犬をペットとして飼う人が圧倒的に多いのがわかります。
特に近年増加傾向にもあります。
そんなみんなから愛されている犬ですが、実は過去の日本の歴史を振り返ると「犬税」なるものが存在しました。。。


■昭和57年まで存在していた

昭和30年には、全国約2700自治体が、「犬税」なるものをかけていました。
今でこそ珍しい税に見えますが、当時は特に注目される税でもなかったようです。

「犬税」は、税目としては「法定外普通税」といって、法律によらずに市町村が自治大臣(現総務大臣)の許可を受けて設けることができる税のことです。
昭和57年、長野県の四賀村を最後にこの税はなくなりました。


■一頭につき、年300円

当時、長野県四賀村では、4月1日現在で生後3ヶ月以上の犬を飼っている場合、1頭につき年300円の税金をかけました。
年間で15万円ほどの税収でした。。。

この「犬税」は、江戸時代から明治時代にかけて存在していたいくつかの動物税の名残です。


■他にうさぎ税なんかも

動物税の名残としては、他にもあります。
例えば、明治初期には東京都で「うさぎ税」なるものが存在していました。
これは、当時外国から珍しいうさぎが多く輸入されてきており、そのうさぎで一儲けを企む人が増えたために設けられました。
うさぎ1羽につき、月に1円の税金がかかりました。

同じ時代には、「馬税」というものもありました。
馬1頭につき1年間で3円かかったそうです。

他にも、「鮎つり税」や「くじら税」なんかもありました。


■犬といえば、「徳川綱吉」

さらに日本の歴史を紐解くと、5代将軍徳川綱吉という方がいました。
この綱吉は、あの悪法で有名な「生類あわれみの令」を発令した方です。

「生類あわれみの令」とは、綱吉のエトである「犬」を飼うことを禁じ、「犬」をいじめると処罰され、もし「犬」を殺してしまうようなことがあれば、なんと死刑となりました。

それがエスカレートして、1695年(元禄8年)には、中野(現在の東京中野)などに、野犬を収容するための犬小屋などを数百棟も造りました。
一番多いときで、約8万匹の犬を飼うまでになりました。

しかもその飼料は白米・味噌・干鰯など立派なもので、これらの費用は「犬金上納」といって農民から高100石につき1石、町民から間口1間につき金3分という「犬税」で賄われていました。

また、この犬を養うのに1年間で約10万両もかかったといわれています。
当時幕府に入ってくる税金は年間で約80万両でしたから、10万両の経費というのは大金であったはずです。
まーこれは、犬を飼育する人が払うのではなく犬のために関係のない一般の人が払うという点では、最初の犬税とは少し方向性が違いますが。。。


■中国ではあまり犬の散歩を見かけません

ここで、少し海外の事情も見ておきましょう。
中国に旅行された方に聞くと、中国では日本のように犬の散歩というのをあまり見かけないようです。

これは、元来中国では犬というのは食用でありペットとして飼う風習は1980年代後半に欧米流のスタイルをまねるところから始まったからのようです。
しかし、よくよく調べてみると中国で犬の散歩を見かけない理由は、それだけではないようです。。。


■北京では初年度約6万円の負担・・・、でした

1995年に北京市厳格限制養犬規定が施行されて、登録費用は犬1頭に対して、1年目5000人民元(約6万円)、2年目以降は2000人民元(約25000円)が必要。

更に飼育する犬の種類も体長35センチ以下の小型犬22品種に限定されていました。
それ以外にも、各家庭で飼うことができる犬の数も1匹だけに限定するなど多くの制限が存在していたようです。

しかしこれはひどいということで、2003年10月にこの規定が改定されました。
登録料は1年目1000人民元(約12000円)、2年目以降は500人民元(約6000円)と大幅に登録費用の引き下げが行われました。

とはいえ、新法でも犬を飼うためには村委員会の同意が必要。
また、混んでいる時間帯に犬を連れてエレベーターに乗ってはいけません。
さらには、散歩など犬を連れて外に出るときに登録証の携行が義務づけられています。

もし禁止区域で犬を散歩させた場合には、最高で500人民元(約6000円)の罰金があるそうです。
中国では他にも、広州や遼寧省などで、「犬税」が存在するようです。


■実は、ドイツ、オランダ、オーストリアでもあります

ここでは、ドイツの例を見ておきましょう。
ドイツでは、飼い犬の数に応じた「犬税」が、市区町村税として犬の飼い主に対して課されます。
ベルリンでは、1年間に犬1匹当たり1万円ほどの負担です。


■ドイツの犬税は、清掃費用に使われています

ここで大事なのは、その「犬税」が一体何に使われているのかです。
ちなみにドイツでは、犬がふんなどで汚した街の清掃代としてその「犬税」を活用しています。

決して、ドイツ人が犬を嫌いな訳ではありませんよ(笑)。


■納得がほしい

最近新聞では、「税金などの国民負担率が50%を超えると、経済活力がそがれる」などと書かれています。
私も国民負担率は低いほうがいいと思います。

しかし、日本より世界競争力があるといわれている、フィンランドは約65%、スウェーデンやデンマークは約75%です。
ちなみに日本は世界競争力9位で、フィンランドは1位、スウェーデンは3位、デンマークは5位です。

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国民負担率が高くても競争力は創れる。
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先の国々のイメージは、「高福祉」や「子育て支援」、「教育の充実」などが思い浮かびます。

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要は、高負担に対する「納得」ですよね。
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先の徳川綱吉のような「犬税」の使われ道であったら、「税金を払う人」は納得しないでしょう。
しかし、その「犬税」の収入を、「犬の幸福のため」や、「犬をより飼いやすくするため」に使われるのなら、納得できる部分もあるのではないでしょうか。

税制はその時代に応じて、変わります。
しかしどんな税金であっても、ある程度の「納得」がほしいと思います。