二重ローン問題に対する税制措置
   
作成日:09/09/2011
提供元:マネーコンシェルジュ税理士法人
  


■震災による二重ローン問題

2011年3月11日に発生した東日本大震災や原子力発電所関連の事故による災害等の影響によって、「住宅ローンを借りている個人」や「事業性資金を借りている個人事業主」等が、今後、これらの既往債務の負担を抱えたままでは、再スタートに向けて困難に直面すること(いわゆる二重ローン問題)が予想されます。

そこで、6月に政府の「二重債務問題への対応方針」が取りまとめられました。

更にはこれを受けて、金融機関等が個人である債務者に対して破産手続等の法的倒産手続によらず、私的な債務整理により債務免除を行うことによって、債務者の自助努力による生活や事業の再建を支援するため、私的整理に関する関係者間の共通認識を醸成し、私的整理を行う場合の指針となるガイドラインを取りまとめることを目標として、7月に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン研究会」が発足されました。

そして、7月15日に「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」が策定・公表されました。


■個人債務者の私的整理に関するガイドライン

このガイドラインの対象となる債務者は、

1.住居、勤務先等の生活基盤や事業所、事業設備、取引先等の事業基盤などが東日本大震災の影響を受けたことによって、住宅ローン、事業性ローンその他の既往債務を弁済することができないこと又は近い将来において既往債務を弁済することができないことが確実と見込まれること

(注)上記の「既往債務を弁済することができない」とは破産手続の対象となる「支払不能」の状態にあることを指し、「近い将来において既往債務を弁済することができないことが確実と見込まれる」とは民事再生手続の対象となる「支払不能のおそれ」に相当する状態にあることを指します

2.本件ガイドラインによる債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的な合理性が期待できること

といった一定の要件を備える「個人債務者」としています。

一方、対象となる債権者は、主に「金融機関等」となっています。


■まずは債権放棄する金融機関側の取り扱い

国税庁は、これら「二重ローン問題」対して、8/16に文書回答という形で、税金の取り扱いを公表しました。

本件ガイドラインに基づいて作成・成立した弁済計画により債権放棄が行われた場合、その債権放棄に係る対象債権者及び債務者の税務上の取扱いは、次のとおりです。

対象債権者において債権放棄により生じた損失は、法人税基本通達9-6-1(金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)の(3)にいう「法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で切り捨てられることとなった部分の金額」であり、その切捨てが同通達(3)のロにいう「行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイ(合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの)に準ずるもの」に該当することから、法人税法上、債権放棄の日の属する対象債権者の事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。

つまり、債権者側では債権放棄額を貸倒損失として損金算入OKですよ、ということです。


■個人である債務者側の取り扱い

債務者において債務免除を受けたことによる債務免除益は、所得税基本通達36-17(債務免除益の特例)にいう「債務免除益のうち、債務者が資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であると認められる場合に受けたもの」に該当することから、所得税法上、各種所得の金額の計算上、収入金額又は総収入金額に算入しないものとされる。

つまり、債権放棄を受けた債務者側では、債務免除益を収入金額として処理しなくていいですよ、ということです。

詳しく知りたい方はこちらをどうぞ

=============================

「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に基づき作成された弁済計画に従い債権放棄が行われた場合の課税関係について(照会)

=============================