高額納税者は、エンジェル
   
作成日:06/13/2005
提供元:今村仁税理士事務所
  


■■■ 解説 ■■■

こんにちは、税理士の今村です。
今年も5月に、長者番付=高額納税者公示制度が、国税庁より発表されました。今回は、その番付の常連と言える方をご紹介します。

■「スリムドカン」は、売れてます

一昨年は、堂々の第1位、今年は第4位で10億円以上の納税でした。
その方の名前は、健康食品販売業「齋藤一人」さん(55歳)です。多くの本も出されていますし、もーみなさん、ご存知ですよね。
そう、あのダイエット食品「スリムドカン」を世に送り出した方です。

国税の納税額は、約10億7,388万円で、推定課税所得は、約30億円。そして、推定住民税は、約4億円。(あくまで推定)
納税額の合計は、約15億円なーり。
累計納税額、170億円超なーり。

この金額を伝えるのに、どんな例えがわかりやすいんでしょう?
例えば、世間を一斉風靡したのは、たったの「3億円事件」。
サマージャンボ宝くじ、これも前後賞を合わせてもたったの「3億円」。

まーどう考えても、斉藤さんは去年1年で、それに見合う国からのサービスは受けていないでしょう。(笑)

■松下幸之助さんは、やっぱり偉かった!

松下電器を創業された、かの有名な松下幸之助さんの話です。
昭和25年以降で、幸之助さんは、なんと10回もこの長者番付のトップになられました。
それだけ、我々一般大衆に還元していただいた、ということですよね。
ありがたや、ありがたや。

やっぱり、松下幸之助さんは、世のため・人のために生きた方ですね。

■長者番付制度の生い立ち

長者番付制度(高額納税者の公示制度)の起源は、1947年の通報制度にあります。所得隠しの人を当局に密告すれば、報奨金がもらえるという制度でした。
約20年前に高額所得者から高額納税者へと中身が変わった際に、「高額納税者の名誉をたたえる」という意味合いが加わりました。

つまり、現在は、
1.脱税防止
2.名誉をたたえる(まー、うれいしい人は少ないでしょうが)
というのが、公示制度を続ける理由です。

■長者になると、住所までオープンに!

長者番付に載ると、プライバシーもあったものではありません。
かつての住基ネットのとき、どころじゃないですよ、ほんと!

税金の額だけでなく、住所まで公表されます。
公示後は、寄付依頼や各種勧誘、ホントかウソかわからない昔の友人から、電話殺到らしいですね。泥棒の格好のターゲットですよね。

■欧米では、どうよ?

アメリカにも長者番付はありますが、出所が違うのですね。日本のように国家権力でエイヤーではない。
主な情報の出所は、上場企業が株主総会に向けて作成する議決権行使書類です。

たぶん、日本のように国家権力で、エイヤー、住所も名前も税金も全部、オープンなんて、欧米でやったら、、、
プライバシー侵害となり、大問題でしょう。

■費用対効果

アメリカの複数の州では、税金滞納者をネットで公開して、羞恥心に問いかけよう、としています。
ジョージア州では滞納者リストの公開から2ヶ月で120万ドルの徴収に成功しました。

長者番付制度は、費用対効果の面でもどうかと思いますね。

政府税制調査会の特別委員である尾崎護氏は、言う。
「公示制度に脱税防止の効果は乏しいのに、番付作成のために全国の税務職員が動員されるなど多額の費用がかかっている。」と。

■日本人の「エンジェル」

たぶん、これを読んでいただいているほとんどの方が、この番付に載っていない方でしょう。

だからどうでもいい、と片付けるには私はちょっと抵抗があります。

多額の税金を払っていただいた、脱税という手口を使う方もいるのに、まじめに払っていただいた。

先週家族で行った温浴市民プール施設のうちの一部は、回りまわっては、斉藤さんあなたのあのネーミングのおかげかも。
「スリムドカン」
いいよ、センスある。

今の時代に合わせて、お客の心理をたくみにとらえて、、、うん、がんばっている、努力しているよ、斉藤さん。
累計納税額、170億円超。
あなたは、日本の・日本人の「エンジェル」です!

よ、名経営者。(ふざけていません。本当にそう思います。)

■松下幸之助さん、トップ10回

名経営者で忘れてはならないのは、松下幸之助さん。
10回もトップをとるなんて。

私が総理大臣なら、必ずや、必ずや、表彰するでしょう。
「税金・勲一等」
日本版、足長おじさんですね。

もう亡くなられた幸之助さんは、生涯の納税額がその対価である国からのサービスを上回っていたでしょう。それなのに、文句も言わず。。。
私なんか、ラーメン屋でチャーシューが小さいだけで文句を言っているのに。。。

ちなみに、この廃止すべき公示制度を続ける法的根拠としては、所得税法233条。
「所得税額が1,000万円を超える者について、その者の氏名及び住所、これらの申告書に記載された所得税の額を翌年5月16日から31日まで、各税務署に掲示する。」
とあります。

■こんなもの、要らない。

私は、多額の納税をした方は、偉い方・がんばった方であると思います。
この何を売っても・作っても売れないといわれる時代に、創意工夫そして何より、絶え間ない努力を続けてこられた。

チャンスを見つけては、試行錯誤されてきたのではないでしょうか。
何度も何度もチャレンジされたのではないでしょうか。
何度も何度も壁にぶつかったのではないでしょうか。

私は、多額の納税をしたら、罰則的にも思えるような公示制度で「さらし者」にされる、というのは、おかしいと思います。
これじゃー時代を創る若者は、新たなチャレンジをしないのではないでしょうか。

ある意味、国一番の功労者ですよ。エンジェルですよ。
日本にとって、貴重な方ですよ。

もっと手厚く、もてなすべきでしょう。
私は、高額納税者にはもっと敬意を表すべきであると思います。
もっと、名誉を与えるべきであると思います。

そして合わせて、長者番付制度(高額納税者の公示制度)は、廃止すべきであると思います。

■税金を払う人

高額納税者は、間違いなく「税金を払う人」です。
たぶん、ほとんどの方が、それに見合うサービスは受けていません。一方的に、払うのみの方です。

さらには、一般大衆からは、ひやかしの目で見られたり、さらし者にされています。
我々が、もう一度考え方を改めるべき、エンジェルとしての「税金を払う人」です。

尊敬すべき・敬意をあらわすべき「税金を払う人」です。