法定調書の作成と提出
   
作成日:12/21/2004
提供元:月刊 経理WOMAN
  


初めて担当する人でもこれで大丈夫!
法定調書の作成と提出
―ミスなく早くやるためのポイントはここだ!




 1月は法定調書の作成・提出の時期です。これは毎年行なう事務ですが、初めて担当する人にとっては分からないことも多いのではないでしょうか。経験がある人でも年に一度のことなので、知識があやふやな部分もあるはずです。

 そこで、法定調書の作成・提出をミスなくスピーディーに進めるポイントを分かりやすく解説します。

◆法定調書って何?

 年末調整が終わって、ほっと一息ついたのも束の間、年明けからは税務関係書類の提出が相次ぎます。なかでも法定調書は、その代表的なものといえるでしょう。

 そもそも「法定調書」とは何でしょうか。これは、所得税法や租税特別措置法などの法律によって、一定の支払い等があった際に、その内容を記載して税務署へ提出することが義務付けられている書類を総称する言葉です。法定調書の提出によって、税務署は各納税義務者の所得金額や資産等の状況を正確に把握することができます。そして、法定調書によって得た情報をもとに適正な課税を図るのです。

 つまり、適正で公平な課税を行なうために提出が義務付けられている書類が、法定調書だというわけです。


◆法定調書作成の流れとポイント

 ここでは一般的な法定調書の作成を実際の事務の流れに沿って解説していきます。

法定調書作成の事前準備

 法定調書を作成する際に準備するものを挙げてみましょう。

1)使用する法定調書の用紙

 法定調書には実に47もの種類がありますが、すべてを一度に使うことは一般的にはなく、次に挙げる6種類を使用するのが基本です。他に必要なものがあれば、税務署に用紙を取りに行く際に追加してください。

・給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)
・退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
・報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
・不動産の使用料等の支払調書
・不動産等の譲受けの対価の支払調書
・不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

2)元帳や補助簿などの会計記録

3)請求書等の証憑や契約書

 これは、元帳等の記録だけでは内容の確認が不十分なときなどに必要です。また、複数の勘定科目に分けて仕訳処理している場合の支払内容等の確認に使用します。

4)取引先名簿

 法定調書は支払先ごとに作成するので、支払先の名称や住所等の情報が必要となります。リスト化した名簿があると非常に便利です。

5)年末調整の資料(1人別源泉徴収簿など)

6)源泉所得税の納付書

7)税務署から送付される「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」

 この手引は、法定調書を作成するときの参考になります。以前に法定調書の作成・提出をやったことがある人も、再度目をとおしておくとミスなく作業が進められるでしょう。

金額の集計

 ほとんどの法定調書は1月1日から12月31日の1年間ごとに集計し、作成を行ないます。受給者ごとに支払いの事実や金額等を確認しながら集計を進めてください。

 事前準備の1)で挙げた「給与所得の源泉徴収票」については、すでに年末調整時に集計し、源泉所得税の金額も算出されているはずなので、新たに集計する必要はありません。

 同じく1)で挙げた「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」には、所得税法第204条第1項の各号に規定されている報酬や料金など、税理士、弁護士、司法書士等への報酬を記載することとなります。これらの支払いについては、会社が源泉所得税を徴収していますので、請求書などで源泉所得税控除前の報酬額を確認し、源泉徴収税額を別に集計しておくと効率的に作業が進められます。なお、これらは毎月、納期の特例を受けていれば半年に一度、源泉所得税の納付書で税務署へ納付しています。納付書に記載した金額と今回集計した金額とを照合して、集計漏れがないかどうか確認することも重要です。

 金額集計のポイントは、以下の二つです。

 第一のポイントは、支払金額を消費税込の金額で集計する点です。これは、法定調書に記載する金額は原則として税込金額で記載することになっているためです。元帳や補助簿から金額を集計するときには、会社のシステムや経理処理の方法によって、税込で記載している場合と税抜きで記載している場合の2種類がありますので、記載のされ方に注意して集計してください。

 第二のポイントは、支払金額の集計には未払いの金額を含む点です。つまり、支払いが確定していれば、実際にはまだ支払われていなくても支払金額として集計することになります。未払い金額については各法定調書に内書きの形で別に記載する場合があるので、区別して集計しておくとよいでしょう。未払い金額の検証は、家賃など毎月発生する支払いの金額を契約書等から確認し、12ヵ月分がきちんと集計されているかをチェックする方法が有効です。

 また、他の支払いの集計も請求書等で日付や金額を確認しながら作業を進めていきます。

法定調書への記載のポイント

 金額の集計が終われば、いよいよ法定調書へ記載を行ないます。このときの注意点は、消費税額の記載方法に複数の種類があることです。

 法定調書の支払金額は、原則として税込金額で記載すると前述しました。しかし実務においては、税抜金額で記載することもあります。ただしこれは、消費税額が明確に区分されていることが前提です。さらに、法定調書の摘要欄に「外消費税等の額×××円」として、消費税の額を別途記載しなければなりません。

 つまり、いずれの記載方法をとっても、税込金額を把握しないと法定調書の記載はできないのです。どちらの記載方法をとるかは各社各様のようですので、処理しやすい方法を採用することになるでしょう。

 また金額記載欄に「内」と印字されている法定調書もあります。これは、前述した未払い金額を書く部分です。未払い金額を記載漏れしないよう、注意してください。

◆法定調書の作成枚数に注意!

 法定調書には、内容によって1枚作成すればよいものと、複写などの方法で数枚を1部として作成するものがあります。

 冒頭で法定調書は提出が義務付けられていると述べました。しかし、すべての法定調書を税務署へ提出する必要はなく、年間の支払金額や年末調整の有無などによって、提出の要否が分かれています。

 また、「給与所得の源泉徴収票」のように、税務署だけでなく市区町村にも提出しなければならないものがあります。この場合は同じ内容のものを数枚作成します。

 「給与所得の源泉徴収票」には、通常右端がオレンジ色の4枚複写の用紙と、緑色の3枚複写の用紙があります。税務署への提出が必要な人の分は4枚複写を、提出が不要の人の分は3枚複写の用紙を使用します。4枚複写の場合、「給与支払報告書」と書いてある上の2枚は市区町村へ、次の1枚は税務署へ提出し、最後の1枚を受給者に交付します。3枚複写の用紙には、このうち税務署へ提出する部分がありません。いずれかの用紙で社員全員分の法定調書を作成します。

 なお、法定調書は税務署が公平かつ適切な課税を行なうという目的以外に、受給者の源泉徴収税額や収入金額などの証明、さらには市区町村への報告といった役割も兼ねています。ですから、税務署等への提出が不要な人の法定調書も必ず作成して受給者本人に交付することが望ましいでしょう。

 税務署への提出要否があるために誤解している人も多いのですが、税務署への提出の要否と法定調書作成の要否は必ずしも一致しないという点に注意してください。


◆法定調書提出のポイント

 すべての法定調書の記載が終わったら、後はそれぞれを提出、交付することになります。その際には、以下の点がポイントとなります。

1)受給者への交付

 法定調書は税務署へ提出するかどうかにかかわらず、受給者本人に交付することが基本です。

2)市区町村への提出

 「給与所得の源泉徴収票」の「給与支払報告書」や、「退職所得の特別徴収票」は、各市区町村へ提出する必要があります。これは住民税の課税資料となるためで、金額の多少にかかわらず、すべての人の分を提出しなければなりません。なお、「給与支払報告書」は受給者の住所地の市区町村へ、各人ごとに同じものを2枚提出します。

3)税務署への提出

 税務署への提出の際には、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」に源泉所得税の金額などをまとめて記載し、各法定調書とセットにして提出します。合計表の記載方法については手引にある記載例を参考にしてください。提出期限は1月31日(月)となっています。

 また、法定調書にはフロッピーディスクなどの磁気媒体で提出できるものがあります。さらに、平成16年からは国税電子申告・納税システム(e−Tax)で、すべての法定調書の提出ができるようになっています。事務量の多い会社では手作業で処理するより効率的だと思われますので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。法定調書の作成と提出は毎年行なう事務なので、今回の導入は難しくても来年以降を視野に入れて考えていくことが肝要です。

 詳しい内容は、国税庁のe−Taxホームページを参照してください。また、ヘルプデスク(0570−015901 受付時間は平日の午前9時から午後5時まで)も用意されていますので、不明な点があれば問い合わせてみるとよいでしょう。

 法定調書の作成と提出は、経理担当者の大切な仕事です。分からないことがあれば手引で調べたり、税務署に問い合わせるなどして、正確な処理を心掛けてください。

〔月刊 経理WOMAN〕