利益準備金の積立限度
   
カテゴリ:税務
作成日:04/06/2004
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 決算を控えて、経理課は連夜の残業が続きます。でも、今期の業績の見通しは明るそうなので、みんなの雰囲気は悪くありません。  

リエ
「課長、大健闘ですね。前期比較で20%増しの利益です。これだと、決算のやりがいがあるわ。」

旭課長
「うん、いま、ご多分にもれず、印刷業界も悪いからね。でも、うちは、一人一人がやることをわきまえているからね。だから仕事しやすい環境になっている。」


恵子
「ということは、株主総会の決議で株式配当をすることになるかもしれないですね。そうなると、資本金の4分の1まで株主配当の10分の1を利益準備金に積み立てる、ということになるのかな。」

  


リエ
「あら、恵子ちゃん、利益準備金の積み立ては、おととし(平成13年)の10月から取扱いが変わっているわ。積み立てる必要がある金額は、資本準備金も含めていいことになったのよ。うちの場合は、3年前に子会社を合併したときの合併差益が200万円あるでしょう。それに、今現在の利益準備金が100万円ある。ということは、資本準備金と利益準備金の合計が300万円で、資本金の4分の1を超えているから、もう積み立てしなくていいのよ。」
  
恵子
「じゃあ、配当しても10%を利益準備金に積み立てなくてもいいのね。」

リエ
「恵子ちゃん、違うのよ。積立ての基準が変わっただけで、配当の10%を積み立てるということは変わっていないわ。」
  

恵子
「ふーん。そうか。でも、いま、資本準備金と利益準備金の合計が300万円でしょう。資本金の4分の1を50万円超えているわ。この金額はどうすればいいんですか。」

  
リエ
「え、あー、それは………。」
  


旭課長
「ははは、リエちゃん、それは私が答えようか。超えた金額は、そのままでも、取り崩してもいいんだよ。平成13年度の商法改正で、取崩しに関してもかなりフレキシブルな取扱いになっているんだ。この利益準備金にしても資本準備金にしても、株主総会の決議と債権者保護手続きを踏めば、どちらからでも、取り崩せるようになっている。自社株取得の財源確保というふれこみだったが実質的には、配当可能利益が比較的簡単に確保できるようになったってことかな。」
  
リエ
「さすが、旭課長。でも、我々としては、配当可能利益ではなくて、賞与支払い可能利益に振り替えてほしいわね。ね、恵子ちゃん。」
    

 
 利益準備金とは、商法で規定する利益積立金です。利益準備金の積立限度額は、資本準備金と合わせて資本金の4分の1に達するまでです。資本金の1/4に達するまで、会社が配当する配当金額の1/10以上(中間配当金の場合は、1/10)を社内留保のために積み立てることを強制した準備金です。 この利益準備金勘定が使用されるのは、利益の配当金が行われたときです。 決算書で利益処分計算書をつけますが、配当金を記載した場合には必ず利益準備金の計算をチェックしてください。

 次に、株主総会による利益処分の仕訳は、一般の方は非常に分かりづらいようですのでこの点について説明します。
 
★ポイント1―
株主総会で何もなければ、決算書にある利益処分計算書に書かれてある通りに、利益処分の仕訳を行います。入力の日付は、株主総会の日となります。
★ポイント2―
入力する勘定科目の場所の選択は、未処分利益勘定(弥生会計の場合は、前期繰越利益勘定)になります。この未処分利益勘定は、当期の利益を含めたその会社の利益留保金額を処理する科目です。
(例)
 株主総会の利益処分で、株主配当金とそれに伴う利益準備金の積み立てが決まった。→未処分利益勘定で入力。未処分利益勘定の借方金額欄に金額を入力。相手科目は、配当金が未払配当金又は未払金勘定を選択、利益準備金は利益準備金勘定を選択する。又、役員に対する賞与がある場合には、相手科目は、未払役員賞与又は未払金勘定を選択。