税金は、きまぐれです。
   
作成日:12/01/2005
提供元:今村仁税理士事務所
  


■■■ 解説 ■■■


■にわかです

去年のアテネオリンピック、日本勢すごかったですね。私はにわかオリンピックファンなのですが、体操やレスリング、柔道などなど、結構夜遅くまで見ちゃいましたね。

ちなみに、アテネオリンピックの日本のメダル獲得数です。
金 16個(もちろん室伏広治さんを含む。谷亮子ちゃんもおめでとう!)
銀 9個(悔しかったレスリングの伊調姉がいましたね。)
胴 12個(長嶋ジャパンの野球、次こそは!)


■谷家は、400万円の報奨金

ちょっとやらしい話ですが、メダルを獲るとどれぐらいの報奨金が出るかご存知ですか?
日本オリンピック委員会(JOC)から出る報奨金は、
金 300万円
銀 200万円
胴 100万円
となっています。

当然、その他に種目ごとの連盟団体や協会、スポンサー企業などからも報奨金が出るケースがあります。ちなみに、柔道の谷亮子さんと野球の谷佳知さんの谷家では、JOCから300万円+100万円=400万円の報奨金を獲得したはずです(笑)。


■谷家の税金はいくら?

それでは、その谷家にかかる税金はいくらでしょう?


答えは、・・・、0円です。
租税特別措置法という法律で、「オリンピック競技大会における優秀な成績を顕彰するものとしてJOCから交付される一定の金品については、非課税」と定められているからです。


■バルセロナ金メダリストの岩崎恭子さんには、税金が・・・

少し古いですが、1992年のバルセロナオリンピックを振り返ります。
このとき記憶に残っているのは、当時14歳だった岩崎恭子ちゃんが、女子水泳200メートル平泳ぎで、見事金メダルを獲得。
そして名台詞、「今まで生きてきた中で一番シアワセ」
(ちなみに、男子マラソンでは、谷口浩美さんが23キロの給水地点で転倒。8位でゴールし「こけちゃいました」のこれまた名台詞を残す。)

かわいかったですよね。
ういういしくて、よかったですよね。
そしてそして、この当時もすでに報奨金制度がありましたから、岩崎恭子ちゃんにも、JOCから300万円が渡されました。
おくればせながら、おめでとう!

しかし、谷家と違うのは、なんとそれに税金がかかったことです。
大体、10万円ぐらい。


■なぜ?なぜ?

なぜでしょう?
谷家では、無税。
岩崎恭子ちゃんには、有税。

幼い子に大金を持たすと、非行に走るから?
それとも、谷亮子さんのバックには、大物トヨタがついているから?


■答えは、きまぐれ

その答えは、1994年の税制改正で、オリンピック報奨金が非課税に改正されたからです。

詳しくは、文部省(現文部科学省)が1994年に、スポーツ振興を図ろうと「オリンピック競技大会優秀者顕彰規定」を設けて、JOCがメダリストに報奨金を贈ることを奨励するようになったことに伴い、税制上でも支援することになったためです。

ということは、1992年バルセロナ五輪のときには、この改正前だったので岩崎恭子ちゃんには税金がかかったのです。
かわいそう。。。

谷家(谷家に限らずですので、悪しからず)の場合は、改正後でしたので無税ですんだのです。


■私が恭子ちゃんなら「税金返して」と言うでしょう

これって仕方が無いといえばそれまでなんですが。
自分が恭子ちゃん本人であったら、なんかちょっと、、、奥歯に物が挟まったような、、、うーん、もやもや。。。

私が恭子ちゃんなら「税金返して」と言うでしょう、無理を承知で。
過去の税金の歴史を振り返ると、税金って結構きまぐれなんです。


■ちなみにワールドカップの報奨金には税金がかかります

オリンピック以外の税金の取り扱いを見ていきます。
まずは、ノーベル賞。
2002年には島津製作所の田中耕一さんが、約3200万円を獲得しました。実はこれには、所得税法第9条1項18号より非課税となっています。

次には、宝くじの当選金。
これにも、当選金付証票法13条より非課税となっています。

それでは、競馬で一儲けした場合はどうでしょうか。
残念ながら、これには税金がかかります。
一時所得という分類になります。
(払戻金ー馬券購入代金ー50万円)×1/2
これに対して、所得税・住民税がかかってきます。

クイズ番組の賞金や福引きの当選金も、馬券と同様の取り扱いです。

最後に、同じ4年に一度の祭典サッカーワールドカップの報奨金。
実はこれにも、税金がかかります。これも取り扱いは、馬券と同様です。


■税金を払う人・もらう人

税制改正前に金メダルを獲った岩崎恭子ちゃんは、中学生ながら立派な「税金を払う人」。
ちなみに谷家は、「税金を払わなくてよかった人」。

だからといって、税制をつくったお役人が一方的に悪いとは思いません。
実際、岩崎恭子ちゃんが当時中学生で、その子に対しても税金を取るというのが「おかしい」となって税制改正に動き出したという経緯があります。

最初から完璧な税制なんていうのは作れませんし、何より世の中が常に動いているのですから毎年良い方向に改善していくことはいいことですよね。

そして、いたずらに特例措置を設けて非課税規定をつくるほうが、不公平税制になります。
(ワールドカップも非課税にしようと言い出すと、他のスポーツ選手から不満が出るでしょう。)

ということは、税金はきまぐれで常に改正があるものだと認識しておくことが大事。
となると、新聞やテレビの税金報道は自分のためにも、よ~く見ておきましょう。
これからの時代は、税金リテラシーを高めることが大事です。