どこよりも分かりやすい「法定調書」の作成・提出の手引き
   
作成日:01/07/2003
提供元:月刊 経理WOMAN
  


超ビギナーのあなたでもこれなら理解できるはず!!
どこよりも分かりやすい「法定調書」の作成・提出の手引き

 1月は、法定調書の提出時期です。例年行事とはいえ年に1回の作業なので、ビギナーの経理担当者はもちろんベテラン担当者でも、前年を思い出しながら悪戦苦闘するケースが少なくないのではないでしょうか?

 そこでここでは、法定調書の基本知識から実際の作成・提出事務までをビギナーにも分かりやすく解説します。



 年末調整が終わった後、引き続き行なわなければならないのが法定調書の作成・提出事務です。
 法定調書とは給料、報酬、料金などの支払者がそれらの1年間分の支払いについ
て、支払先の住所、氏名、支払金額などを記載した書類をいいます。
 これは税務署が適正な課税を確保することを目的に、支払いの事実をつかむため提出を義務付けているものです。
 法定調書は全部で47種類ありますが、一般的に会社が提出しなければならないものは次の6つです。

1)給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書
2)退職所得の源泉徴収票と特別徴収票
3)報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
4)不動産の使用料等の支払調書
5)不動産等の譲受けの対価の支払調書
6)不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 平成14年1月1日から12月31日までにこれらの支払いをした場合は、給与支払報告書と特別徴収票は市町村に、それ以外は税務署に提出することになります。提出期限は、平成15年1月31日です。
 税務署から送付された「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」をよく読んで、期日に遅れないよう処理していきましょう。
 では、それぞれの法定調書について作成手順と注意点をアドバイスしていきます。

1.給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書

 給与を支払った場合、「給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書」をすべての受給者について作成します。これらは3枚、または4枚の複写式で同時に作成でき、内容的には同じものです。

 税務署への提出が必要な人の範囲は決められています(図表1参照)。作成する前に提出の要否をチェックし、使用する用紙を確認しましょう。税務署への提出が必要な人は4枚複写のオレンジ刷を、税務署へ提出する必要がない人は3枚複写のグリーン刷を使用します。

図表1 給与所得の源泉徴収票の提出範囲


 図表2を見ながら作成と提出の流れを説明していきましょう。
 オレンジ刷の4枚複写のものを使用した場合、1、2枚目は「給与支払報告書」として市区町村へ、3枚目は「源泉徴収票」として税務署へ提出し、4枚目は「源泉徴収票」の受給者交付用となります。3枚複写のものを使用した場合は、1、2枚目は「給与支払報告書」として市区町村へ提出し、3枚目は「源泉徴収票」として受給者に交付します。

 それぞれ用紙の左隅に市区町村、税務署、受給者と記載されているので、きちんと確認してから提出・交付しましょう。
 なお、「給与支払報告書」の提出先は、平成15年1月1日現在の住所地の市区町村となります。提出の際は、市区町村ごとに「給与支払報告書(総括表)」を添付することになっています。

図表2 給与所得の源泉徴収票と給与支払報告書の作成手順の流れ


2.退職所得の源泉徴収票と特別徴収票

 平成14年中に、法人の役員に支払う退職手当等の金額が確定した場合、「退職所得の源泉徴収票」を税務署に、「特別徴収票」は市区町村に提出します。
 提出期限はどちらも退職後1ヵ月以内ですが、「退職所得の源泉徴収票」については平成15年1月31日までにまとめて提出しても構いません。

 なお、「特別徴収票」の提出先は、平成14年1月1日現在の受給者の住所地の市区町村となります。1)の「給与支払報告書」とは判断時期が異なりますので気を付けてください。

3.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

 弁護士や税理士、社会保険労務士に報酬を支払うときは、所得税を源泉徴収することになっています。1年間にどれくらい報酬を支払い、どれくらい源泉徴収したかを「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」に記入し提出します。また、原稿料や講演料を支払ったときも同様に、支払者が源泉徴収し、この法定調書を提出することになります。

 ただし、一定の金額以下の場合は提出する必要がありません。たとえば、司法書士・税理士・建築士等の報酬については、年間の支払合計額がそれぞれ5万円以下だった場合は提出は不要となります。外交員・ホステス・コンパニオン等は50万円以下なら提出不要です。

 作成するときは、税務署提出用として1部、本人交付用として1部、会社保管用として1部、合計3部を作成しておくとよいでしょう。この調書は複写式ではないので、カーボン紙等を使用して記入すると便利です。

4.不動産の使用料等の支払調書

 不動産などの借受けの対価を支払った場合、「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要があります。不動産の借受けの対価とは、事務所の家賃や駐車場の地代、権利金や更新料、名義書換料などをいいます。このほか、催物の会場を賃借するような一時的な賃借料についても、この法定調書を提出しなければなりません。

 なお、この法定調書に関しても提出する範囲は決められています。同一人に対して年間の支払合計額が15万円以下の場合は、提出の必要はありません。

5.不動産の譲受けの対価の支払調書

 不動産等を譲受け(購入等)し、同一人に対しての支払合計額が100万円を超えた場合、「不動産の譲受けの対価の支払調書」を提出する必要があります。
 不動産の譲受けには、購入のほか、交換、競売、公売等による取得も含まれます。

6.不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

 不動産等の売却や貸付けのあっせん手数料を、同一人に対して15万円を超える金額を支払ったときに提出するのが「不動産の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」です。 

 ただし、4)「不動産の使用料等の支払調書」や5)「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を作成した際に、その「(摘要)」欄の「あっせんした者」の欄に、あっせんした人(会社)の住所や・氏名、あっせん手数料の「支払確定年月日」「支払金額」を記載している場合は、この「不動産の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出を省略することができます。



 これまで説明してきた法定調書を税務署へ提出する際は、合計表を添えて提出することになっています。合計表の記載については、税務署から送付された記載例をよく見て間違いのないように記入しましょう。
 とくに「給与所得の源泉徴収票」の欄には、税務署へ提出しない人の金額も合計表に記入する必要があるので注意してください。
 また、提出すべき法定調書が1枚もない場合でも、合計表には所定の記載を行ない、「(摘要)」欄に「該当なし」と書いて提出します。




 法定調書の提出範囲の金額や記載する支払金額には、消費税を含めるのでしょうか? それとも含めないのでしょうか?
 原則として、法定調書の金額の判定や支払金額には、消費税の額を含めることになっています。
 ただし、消費税の額が明確に区分されている場合は、その額は含めないで判断、記載しても構いません。その場合には、「(摘要)」欄に消費税の額を記載してください。



 提出した法定調書に誤りがあった場合は、次の3つをあらためて提出します。
1)先に提出した法定調書の写し(欄外の右上に「無効」と赤字で明記する)
2)正しい法定調書
3)先に提出した合計表の写し(上部の余白部分に「訂正分」と赤字で明記する。さらに訂正個所を二重線で抹消し、正しい額を記入する)