第109回 ミクシー(mixi)は、商売に利用できるのか?
(2007/11/30)

 今週は、いま話題の「mixi(ミクシー)」を取り上げてみます。


●ミクシーとは?

 「株式会社ミクシィ」という会社が上場されました。

 話題のネット銘柄ということで買いが殺到し、初日は値がつかず、買い気配の「315万円」の株価となりました。この価格で計算すると、時価総額が2,200億円と、大変な値段がついています。

 この「ミクシィ」という会社が提供するのが、会社名と同じ

 【mixi

というサービスです。

 この「mixi」というサービスは、「SNS」(Social Networking Service)と呼ばれるコミュニケーションサービスで、日本では、「mixi」以外にも「gree」というサービスがあり、何百万人もの人が会員登録しています。


●mixiの特徴

 さて、「mixi」を使ったことがない人も多いと思いますので、その特徴を簡単に説明しておきましょう。

 「mixi」というサービスを、誤解を恐れずに簡単に説明すると

・ネット上の日記交換サービス

です。

 「mixi」に会員登録すると、その人専用の「日記スペース」が与えられます。

 この日記スペースで、個人の日記を書いたり、自分のプロフィールを書いたり、写真を掲載したりできます。

 そしてこの日記には、他の会員が書き込みすることもできます。日記の所有者と他の会員が、お互いに書き込みを続けて、コミュニケーションを取ることができるのです。

 もちろん他人の日記スペースを訪問することもできるので、訪問先の人の日記を読んだり、写真を見たりできます。そしてそこでも、同じように日記に対してコメントをつけることができます。

 その上、自分の日記に誰がアクセスしたかを簡単に知ることができます。自分の日記を読んてくれた人が誰か分かるので、「ああ、あの人が遊びに来てくれた」という感じになります。


●mixiは交換日記

 実際はもっと様々な機能が提供されているのですが、mixiの基本的な機能をもう一度まとめてみると、こんな感じになります。

・自分の日記を公開できる

・その日記を見た人が、その場で書き込みできる

・その書き込みに対して、日記の作者がお返しのコメントをつけられる

・誰が日記にアクセスしたかが分かる

 このように、日記の書き込みを通して、参加者間でコミュニケーションを取れるのが、mixiの魅力なのです。

 よくmixiのことを、ネット上のコミュニケーションツールという風に説明されます。

 コミュニケーションツールと言われてもイメージが沸かないと思いますが、ネット上で日記を交換するようなものだと理解してもらえれば、何となくイメージが沸くのではないでしょうか。

 上記のように、参加者同士がお互いに日記への書き込みを交換する、いわば

「ネット上の交換日記」

が、mixiの本質なのです。

 さて、これだけ「mixi」が流行ると、

「mixiをビジネスに利用できないでしょうか」

というご質問を頂くケースが増えてきました。


●SNSをビジネスに利用できないか?

 さて、「mixi」のようなサービスを総称して、「SNS」(Social Networking Service)と呼びます。

 そして最近ご質問が多いのが、この「SNS」を使って、集客できないか、あるいは既存顧客の囲い込みができないか、というものです。

 過去にも、メルマガが流行ればメルマガで集客を、ブログが流行ればブログで集客を、という感じのネット業界ですが、今度はどうでしょうか?


●なぜmixiを利用するのか?

 ビジネス利用の可否を考える前に、「mixi」の利用者は、なぜ「mixi」を利用するのでしょうか。

 色々と理由はあるのでしょうが、私は、

・「mixi」の利用者は、「寂しい」から「mixi」を利用する

と考えています。

 先ほどもお話ししたように、「mixi」の本質は「ネット上の交換日記」にあります。

 そして「交換日記」したい人というのは、「寂しい」から、あるいは「人恋しい」から交換日記をつけるのです。

 実社会で友達が少ないから、ネット上の交換日記を通じて友達を作ろう、という人もいるでしょう。

 また社交的な人であっても、夜、自分の部屋にいて、何となく人恋しくなって、「mixi」で日記のやり取りをする、という人も少なくないと思います。

 私が若い頃だと、夜は友人と飲んでいるか、麻雀しているか、あるいは長電話しているか、という感じだったのですが、こうした活動が今では「mixi」での交換日記に取って代わっている訳です。

 家族と暮らしていればそうでもないのでしょうが、独身者が増えている現代社会では、一人っきりで「寂しく」暮らしている人が少なくないのです。

 特に、学生の頃と違って、20代後半、あるいは30・40代の独身者の場合、仕事以外の人間関係を維持するのはかなり大変です。そのため、「プライベートは孤独」な人が少なくない訳です。

 あるいは、結婚している人でも、例えば旦那さんが毎日仕事で遅い主婦とかだと、同じように「孤独」な人が少なくありません。

 こうした人にとって、「mixi」のようなサービスを利用して、ネット上で「交換日記」をすることで、「寂しさ」を紛らわす素晴らしツールな訳です。

 部屋には一人しかいなくても、ネットの向こう側にたくさんの友人がいる、と言う状況が「mixi」の世界なのです。


●SNSのサービス利用について

 こうした傾向は、「mixi」以外の「SNS」サービスも同じです。

 「mixi」以外にも様々なSNSサービスがありますが、人気があるのは基本的に「寂しい人が、参加者とコミュニケーションできる」サービスです。

 逆に、こうしたコンセプトではないSNSサービス、例えば「企業の顧客同士が、SNSを通じて情報交換する」というようなコンセプトの場合、ほとんどアクセスがありません。

 「寂しい人」は、寂しいからずっと「mixi」のようなSNSサービスにアクセスします。当然、アクセス数も増えますし、日記の書き込みの数も膨大になります。

 一方、「情報交換」のような目的の場合は、情報を収集したいとき「だけ」アクセスするわけですから、思ったほど利用されないのです。


●当面は既存SNSサービスの広告利用

 さて、SNSサービスをビジネスに利用する、と言った場合、下記の2つの方法が考えられます。

・「mixi」や「gree」と言った、既存のSNSサービスを利用

・SNSシステムを導入して、自社でSNSサービスを提供

 二つめの「自社でSNSサービスを提供する」というのは、ブログを立ち上げるような感じで、自社専用のSNSサービスを立ち上げるイメージです。

 自社でSNSサービスを提供し、新規顧客の開拓に利用したい、と考える社長さんも少なくないようなのですが、先ほどの「寂しい」というコンセプトを押さえておかないと、中々うまく行かないと思います。

 かと言って、「mixi」や「gree」等の既存のSNSサービスが提供しているビジネス系のサービスはほとんどありません。

 できるのは、せいぜい広告を出す位です。

 もちろん、「寂しい」人達と日記交換しながら、自分のサイトに誘導して、「情報商材を販売」したり、「健康食品を販売」したりすることも不可能ではないのでしょうが、結構手間がかかりますから、あまりお勧めしません。


 と言うわけで、現段階では、SNSというのは、「寂しい人の社交場」であり、「ビジネスのツール」ではない、という風に認識しておきましょう。