第95回 大企業の「売れる仕組み」を真似してみよう!
(2007/08/24)

 本日は少し「マーケティング」の話をしてみます。


●大企業は仕組みで売る

 先日来、銀行の収益が急拡大している記事が新聞を賑わしています。私の出身母体である「三菱UFJ銀行」などは、利益が1兆円を超えたそうですから、ちょっとビックリしますよね。

 また証券会社も軒並み好業績で、経常利益が前年比倍増、なんて会社も珍しくありませんし、金融以外でも、セブンイレブンやトヨタ等々、業績が絶好調な会社が目白押しです。

 こうした大企業の好業績を横目で見ながら、「大企業はいいよな〜」と羨ましく感じている社長さんも多いと思いますが、なぜこうした大企業の業績はいいのでしょうか?

 「景気がいいから」「大企業は人材が豊富だから」「大企業は資金が豊富だから」等々、色々な意見があると思います。

 もちろんこうした側面も確かにあるのですが、元「大企業」出身者として感じるのは、

・大企業は「売れる仕組み」を持っている

ということです。

 大企業の場合、確かに人材も揃っていますし、資本も大きいですから、中小企業に比べると有利な点があるのは確かです。

 ただ私の目から見ると、中小企業と大企業の一番の違いは、「売れる仕組み」を持っているかどうか、にあると思います。


●大企業の「売れる仕組み」とは?

 この「売れる仕組み」というのは、簡単に言うと

「大企業の場合は、経営者がそれほど努力しなくても、勝手に売上があがる」

ということです。

 景気が回復したら自動的に売上があがるのが大企業で、景気が回復しても一生懸命に経営者が走り回らねばならないのが中小企業、という感じでしょうか。

 例えば、銀行の決算が好調な理由の一つに、「投資信託」や「年金保険」など個人向け金融商品の手数料収入が拡大したことがあげられます。

 要は、銀行の従来型商品である「定期預金」や「住宅ローン」と言った商品ではない、新しい個人むけの「新商品」の販売が絶好調だ、ということなのです。

 ここで問題になるのが、なぜこうした「新商品」が簡単に売れるのか、という点です。

 普通の中小企業の場合は、新商品を投入したと言っても、そう簡単には売れないと思いますが、なぜ銀行は簡単に新商品を売れるのでしょうか。


●大企業は仕組みで売っている!

 銀行の収益が好調な理由は色々と考えられますが、最大の理由は

・お客さんが、放っておいても来店してくれる

ことにあると思います。

 銀行というのは、経営者(頭取)が何の努力もしなくても、お客さんが必ず来店してくれます。ATMの入出金、税金や公共料金の支払い等、放っておいてもお客さんが「勝手に」来店してくれるのです。

 小売りや飲食の場合、最も難しいのはお客さんに「お店まで足を運んでもらう」ことですが、銀行の場合は、何の努力をしなくても多数のお客さんが「勝手に」来店してくれるのです。

 お客さんが来てさえくれれば、あとは売り込むだけです。手を変え品を変え「投資信託はいかがですか?」、「新しい年金の商品が登場しました」とセールスをかければ簡単に売上があがります。

 このように銀行の場合は、

・集客の仕組みができている

ことが、最大の「売れる仕組み」なのです。

 こうした「売れる仕組み」を大企業は必ず持っています。この売れる仕組みがあるからこそ、景気が回復したら直ぐに業績向上に繋がるわけです。

 そして、この仕組みがあれば、実は「人材」も「資金」もあまり関係ありません。

 もちろん優秀な営業マンがたくさんいれば、それに超したことはないのですが、お客さんが勝手に来店してくれる「集客の仕組み」があれば、少々セールステクニックに乏しい営業マンでも、簡単に新商品を売り込むことができるのです。

 実際問題、銀行の店頭で金融商品をセールスしているのは、「セールスのプロ」ではありません。

 最先端のセールステクニックをトレーニングされたわけでもなく、営業経験が全くないような短大卒の女の子が、こうした新商品の販売を行っているのです。

 金融知識はあるけれど、「セールスの素人」の女の子でも、新商品が売れてしまうところが、銀行の「売れる仕組み」なのです。


●人で売るのではなく、仕組みで売る

 このように、大企業は「売れる仕組み」を必ず持っています。

 「スーパー営業マン」のセールステクニックや、「辣腕経営者」のトップセールスがなくても、「仕組みで売る」ことができるのが大企業の凄いところなのです。

 いわば、

「人で売るのではなく、仕組みで売る」

という感じでしょうか。

 中小企業の経営者の方とお話ししていて思うのが、この「仕組み」の概念に乏しいと言うことです。仕組みがないから、社長さんが一人で走り回っている、という企業が少なくありません。

 「社長さんが売る」とか、「優秀な営業部長が売る」という形ではなく、

「営業経験が乏しい営業マンでも、簡単に売れる仕組み」

さえできれば、あとは放っておいても売上は上がっていきます。

 何かというと、「うちの営業マンはレベルが低いから」と口をついて出てしまう社長さんは、ちょっと「仕組み」について考えてみてはいかがでしょうか。(^^)V