国税庁から事務年度ごとに発表される、相続税の調査事績を見ていると、税務調査で狙われているのは明らかに現預金です。そのため、税務調査にならないための一番の実務対応としては、相続税の申告書を提出するまでに、どれだけ徹底的に被相続人の生前の金融資産とその異動を正確に確認することができるかが大変重要になってきます。 また大変悩ましいことに、当然といえば当然ですが、相続人の方たちは相続税や民法等には詳しくありませんので、税理士の常識が通用しません。そのため、相続税の申告をお手伝いさせていただくときには、先生が必要以上に、しつこいぐらい丁寧に相続人の皆さまからお金の動きを確認しないといけません。 このことを象徴する裁決があります。 平成24年に東北のとある国税不服審判所で、申告に含まれていなかった約1億2000万円は被相続人の財産であると判断し、また申告に入れなかった行為は仮装・隠ぺいに当たるとして重加算税が賦課され、当然、重加算税なので配偶者の軽減措置も否認されるという裁決がありました。 今回はこの裁決を解説いただきながら、実務での重要なポイントをお話しいただきました。 被相続人の生前の現金の動きをどのように課税庁が把握し、そして指摘してくるのかがよく分かります。また、先生方が実務を行う上での注意点や力の入れどころがお分かりいただけるかと思います。 思わぬところで重加算税となりますと、今回の事案のように、配偶者軽減もなくなってしまいますので、お気を付けいただければと思います。
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