これだけは押さえておきたい・・・
(2012年9月)

居住者募集=賃貸割合100%
この考え方は大変危険です

貸家建付地評価における
賃貸割合の実務のツボ
笹岡会計事務所 税理士
笹岡 宏保 氏

 貸家建付地の評価をする際に賃貸割合という概念があります。ご存じの通り、賃貸割合が100%に近いほど評価は下がります。実は、この「賃貸割合」をしっかり考えないとトラブルにつながります。

 例えば、相続が発生したときに、全10室あるアパートのうち、2室が空室であった場合、賃貸割合は8/10となります。しかし緩和処置として、継続的に賃貸されていたアパート等で課税時期において一時的に空室であったと認められる部分がある場合には、賃貸されていたものとして評価してもよいとあります。そのため、居住者を募集していれば分子に入れてよいと考える先生がいます。

 笹岡先生はその考え方は危険だとおっしゃいます。

 「継続的に賃貸されていたアパート等で課税時期において一時的に空室であったと認められる部分」については国税庁から情報が出ており、5つの要件を事実関係から総合的に判断するとなっています。

 本講義は、居住者募集中にもかかわらず、賃貸割合100%を否認された事例をあげ、実務ではどこまで検討すべきかが分かります。

 また、要件の中でも判断に悩む「例えば1カ月程度」とはどのように考えればよいのか。実は23カ月間空室だったにも関わらず賃貸割合100%で認められた事例があります。ここが実務のポイントになります。この一定期間を実務ではどのように判断するのか。

 決して特殊な論点を解説しているわけではありません。実務において検討しなければならない大切なポイントです。

1) 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか。
2) 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか。
3) 空室の期間、他の用途に供されていないかどうか。
4) 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1カ月程度であるなど一時的な期間であるかどうか。
5) 課税時期後の賃貸が一時的なものでないかどうか。


「え!? こんなに奥深い! 貸家建付地評価における
賃貸割合の実務のツボ」

笹岡 宏保 氏
◆プロフィール◆
1962年兵庫県生まれ。85年関西大学経済学部卒業。大学在籍時に税理士試験合格。91年、笹岡会計事務所設立。そのセミナーは実務に根付いた内容と大人気。