中小企業の会計に関する指針
 決算公告と貸借対照表及び損益計算書並びに株主資本等変動計算書の例示(86−88)
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 決算公告と貸借対照表及び損益計算書並びに株主資本等変動計算書の例示


 要 点
貸借対照表は公告しなければならない。


86.決算公告

 株式会社は、貸借対照表を公告しなければならない(会社法第440条第1項)。なお、公告方法が官報又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙である株式会社は、貸借対照表に記載され又は記録された情報を電磁的方法により公開することができる(会社法第440条第3項)。ただし、その場合は、その要旨ではなく、貸借対照表そのものを開示する必要がある。
 なお、貸借対照表のみならず、損益計算書も重要な書類であるので、これらに関しても開示を行うことが望ましい。なお、電磁的方法を採用する場合、これらの要旨ではなく、記載又は記録されているものをそのまま公開することとなっている。この方法によれば、あえて要旨を作成する作業又は注記を省略するという作業は必要ないため、事務的な負担が増えることはなく、実務的には要旨の公開よりも容易である。


87.貸借対照表及び損益計算書並びに株主資本等変動計算書の例示

 貸借対照表及び損益計算書並びに株主資本等変動計算書の例は、下記のとおりである。ただし、項目の名称については一般的なものを示しており、企業の実態に応じてより適切に表示すると判断される場合には、項目の名称の変更又は項目の追加を妨げるものではない。


88.キャッシュ・フロー計算書

 会社法上、キャッシュ・フロー計算書の作成は要求されていない。しかし、経営者自らが会社の経営実態を正確に把握するとともに、金融機関や取引先からの信頼性の向上を図るため、キャッシュ・フロー計算書を作成することが望ましい。


 貸借対照表の例示

貸借対照表 (平成××年×月×日現在)
資産の部
流動資産    
  現金及び預金    ×××
  受取手形    ×××
  売掛金    ×××
  有価証券    ×××
  商品及び製品    ×××
  短期貸付金    ×××
  前払費用    ×××
  繰延税金資産    ×××
  その他    ×××
  貸倒引当金    △××
   流動資産合計    ×××
固定資産    
  (有形固定資産)    
  建物    ×××
  構築物    ×××
  機械及び装置    ×××
  工具、器具及び備品    ×××
  リース資産    ×××
  土地    ×××
  建設仮勘定    ×××
  その他    ×××
  (無形固定資産)    
  ソフトウェア    ×××
  のれん    ×××
  その他    ×××
  (投資その他の資産)    
  関係会社株式    ×××
  投資有価証券    ×××
  出資金    ×××
  長期貸付金    ×××
  長期前払費用    ×××
  繰延税金資産    ×××
  その他    ×××
  貸倒引当金    △××
   固定資産合計    ×××
繰延資産    ×××
       
       
       
  資産合計  ×××
負債の部
流動負債    
  支払手形    ×××
  買掛金    ×××
  短期借入金    ×××
  未払金    ×××
  リース債務    ×××
  未払法人税等    ×××
  賞与引当金    ×××
  繰延税金負債    ×××
  その他    ×××
   流動負債合計    ×××
固定負債    
  社債    ×××
  長期借入金    ×××
  リース債務    ×××
  退職給付引当金    ×××
  繰延税金負債    ×××
  その他    ×××
   固定負債合計    ×××
    負債合計  ×××
純資産の部
株式資本    
  資本金      A
  資本剰余金    
   資本準備金      B
   その他資本剰余金      C
   資本剰余金合計     
  利益剰余金    
   利益準備金      E
   その他利益剰余金    ×××
    ××積立金      F
    繰越利益剰余金      G
   利益剰余金合計     
  自己株式     △I
   株主資本合計     
評価・換算差額等    
  その他有価証券評価差額金      K
   評価・換算差額等合計     
新株予約権      M
  純資産合計   
  負債・純資産合計  ×××


 損益計算書の例示

損益計算書
自 平成××年×月×日
至 平成××年×月×日
売上高  ×××
売上原価  ×××
   売上総利益  ×××
販売費及び一般管理費  ×××
   営業利益  ×××
営業外収益  
 受取利息  ×××
 受取配当金  ×××
 雑収入  ×××
  営業外収益合計  ×××
営業外費用  
 支払利息  ×××
 手形譲渡損  ×××
 雑支出  ×××
  営業外費用合計  ×××
   経常利益  ×××
特別利益  
 固定資産売却益  ×××
 投資有価証券売却益  ×××
 前期損益修正益  ×××
  特別利益合計  ×××
特別損失  
 固定資産売却損  ×××
 減損損失  ×××
 災害による損失  ×××
  特別損失合計  ×××
   税引前当期純利益  ×××
   法人税、住民税及び事業税  ×××
   法人税等調整額  ×××
   当期純利益
 

注: 貸借対照表のA〜N及び損益計算書のQの各項目の金額は、株主資本等変動計算書の各「当期末残高」欄の金額及び「当期純利益」と一致することになる。


 株主資本等変動計算書の例示(純資産の各項目を横に並べる様式例)
大きく表示
  株主資本 評価・換算差額等
(*2)
新株
予約権
純資産
合計
(*3)
資本金 資本剰余金 利益剰余金 自己株式 株主
資本
合計
その他
有価証
券評価
差額金
評価・換
算差額等
合計(*3)
資本
準備金
その他
資本
剰余金
資本
剰余金
合計
(*3)
利益
準備金
その他利益
剰余金(*1)
利益
剰余金
合計
(*3)
××
積立金
繰越利益
剰余金
当期首残高 ××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× △××× ××× ××× ××× ××× ×××
当期変動額(*4)                            
 新株の発行 ××× ×××   ×××           ×××       ×××
 剰余金の配当             △P △×××   △×××       △×××
剰余金の配当に
伴う利益準備金
の積立て
        ×××   △××× ×××   ×××       ×××
 当期純利益             ×××   ×××       ×××
 自己株式の処分                 ××× ×××       ×××
 ×××××                            
株主資本以外の
項目の当期変動
額(純額)
                    ×××
(*5)
×××
 
×××
(*5)
×××
 
当期変動額合計 ××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× ×××
当期末残高 △I

(*1)  その他利益剰余金については、その内訳項目の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各金額を注記により開示することができる。この場合、その他利益剰余金の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各合計額を株主資本等変動計算書に記載する。
(*2)  評価・換算差額等については、その内訳項目の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各金額を注記により開示することができる。この場合、評価・換算差額等の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各合計額を株主資本等変動計算書に記載する。
(*3)  各合計欄の記載は省略することができる。
(*4)  株主資本の各項目の変動事由及びその金額の記載は、おおむね貸借対照表における表示の順序による。
(*5)  株主資本以外の各項目は、当期変動額を純額で記載することに代えて、変動事由ごとにその金額を株主資本等変動計算書又は注記により表示することができる。
また、変動事由ごとにその金額を株主資本等変動計算書に記載する場合には、おおむね株主資本の各項目に関係する変動事由の次に記載する。

注: A〜Qの金額は、それぞれ貸借対照表、損益計算書の各「項目」の金額と一致し、また、Pの金額は、配当金支払額の例の「配当金の総額の計」と一致することになる。


 株主資本等変動計算書の例示(純資産の各項目を縦に並べる様式例)

  株主資本      
    資本金 当期首残高    ×××
      当期変動額 新株の発行 ×××
      当期末残高  

    資本剰余金      
     資本準備金 当期首残高   ×××
      当期変動額 新株の発行 ×××
      当期末残高  

     その他資本剰余金 当期首残高及び当期末残高

    資本剰余金合計(*3) 当期首残高   ×××
      当期変動額   ×××
      当期末残高  

    利益剰余金      
     利益準備金 当期首残高   ×××
      当期変動額 剰余金の配当に伴う積立て ×××
      当期末残高  

    その他利益剰余金(*1)      
     ××積立金 当期首残高及び当期末残高

     繰越利益剰余金 当期首残高   ×××
      当期変動額 剰余金の配当 △P
        剰余金の配当に伴う利益
準備金の積立て
△×××
        当期純利益
      当期末残高  

    利益剰余金合計(*3) 当期首残高   ×××
      当期変動額   ×××
      当期末残高  

    自己株式 当期首残高   △×××
      当期変動額 自己株式の処分 ×××
      当期末残高   △I

    株主資本合計 当期首残高   ×××
      当期変動額   ×××
      当期末残高  

  評価・換算差額等(*2)      
    その他有価証券評価差額金 当期首残高   ×××
      当期変動額(純額)(*4)   ×××
      当期末残高  

     評価・換算差額等合計(*3) 当期首残高   ×××
      当期変動額   ×××
      当期末残高  

    新株予約権 当期首残高   ×××
      当期変動額(純額)(*4)   ×××
      当期末残高  

    純資産合計(*3) 当期首残高   ×××
      当期変動額   ×××
      当期末残高  


(*1)  その他利益剰余金については、その内訳項目の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各金額を注記により開示することができる。この場合、その他利益剰余金の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各合計額を株主資本等変動計算書に記載する。
(*2)  評価・換算差額等については、その内訳項目の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各金額を注記により開示することができる。この場合、評価・換算差額等の当期首残高、当期変動額及び当期末残高の各合計額を株主資本等変動計算書に記載する。
(*3)  各合計欄の記載は省略することができる。
(*4)  株主資本以外の各項目は、変動事由ごとにその金額を記載することができる。この場合、株主資本等変動計算書又は注記により表示することができる。

注1: 期中における変動がない場合には、「当期首残高及び当期末残高」のみを表示することができる。
(ただし、その他利益剰余金又はその内訳科目である繰越利益剰余金の変動事由として表示する当期純利益については、省略できないことに留意する。)
注2: A〜Qの金額は、それぞれ貸借対照表、損益計算書の各「項目」の金額と一致することになる。
また、Pの金額は、配当金支払額の例の「配当金の総額の計」と一致することになる。


 株主資本等変動計算書に関する注記の例示

(1)  発行済株式の種類及び総数並びに自己株式の種類及び株式数に関する事項
  (単位:千株)
 
  当期首株式数 当期末株式数 摘 要
発行済株式      
普通株式 420,000 460,000 注1
合 計 420,000 460,000  
自己株式      
普通株式 1,000 3,100 注2
合 計 1,000 3,100  
注1: 普通株式の発行済株式総数の増加40,000千株は、新株予約権の権利行使による新株の発行による増加です。
注2: 普通株式の自己株式の株式数の増加2,100千株は、単元未満株式の買取りによる増加です。

(2)  配当に関する事項
以下の注記例は、剰余金の配当決議を株主総会(中間配当は取締役会)で決議する会社(X08年3月期)を想定しています。なお、2)の場合については、剰余金を配当する会社は、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた配当の原資(資本剰余金又は利益剰余金)を記載します。

1)配当金支払額(例:表による方法)
決議 株式の
種類
配当金の
総額
1株当た
り配当額
基準日 効力発生日
X07年6月X日
定時株主総会
普通株式 33百万円 10円 X07年
3月31日
X07年
7月X日
X07年12月X日
取締役会
普通株式 33百万円 10円 X07年
9月30日
X08年
1月X日
注: Pの金額は、株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」の金額と一致することになる。

2) 基準日が当期に属する配当のうち、配当の効力発生日が翌期となるもの
X08年6月X日開催の定時株主総会の議案として、普通株式の配当に関する事項を次のとおり提案しております。
 (ア) 配当金の総額 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50百万円
 (イ) 1株当たり配当額・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15円
 (ウ) 基準日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ X08年3月31日
 (エ) 効力発生日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ X08年7月 X日

なお、配当原資については、利益剰余金とすることを予定しております。


 定時株主総会終了後に計算書類を開示する場合(税務申告書に添付する場合等)は、上記の注記に加えて、例えば、以下の文言を記載することが望ましい。

X08年6月X日開催の定時株主総会において、上記の議案は承認可決されております。(○月○日加筆)


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