中小企業の会計に関する指針
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 個別注記表


 要 点
会社計算規則では、重要な会計方針に係る事項に関する注記等の項目に区分して、個別注記表を表示するよう要求されており、かつ、それら以外でも貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書により会社の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項は注記しなければならないとしている。したがって、これらの規則に従い注記を行うことが必要である。


82.会社計算規則の規定

 会社計算規則では、重要な会計方針に係る事項に関する注記等の項目に区分して、個別注記表を表示するよう要求されている。また、それら以外であって、貸借対照表、損益計算書及び株主資本等変動計算書により会社の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項は注記しなければならない。なお、個別注記表については、必ず「注記表」という1つの書面として作成しなければならないということではなく、従来どおり貸借対照表などの注記事項として記載することも認められている。
 ただし、会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く。)の個別注記表((a))や会計監査人設置会社以外の公開会社の個別注記表((b))については、以下の表のとおり注記を要しない項目が規定されている。

(注記を要求される項目……○、注記を要求されない項目……×)
項  目 (a) (b)
(1) 継続企業の前提に関する注記 × ×
(2) 重要な会計方針に係る事項に関する注記
(3) 会計方針の変更に関する注記
(4) 表示方法の変更に関する注記
(5) 会計上の見積りの変更に関する注記 × ×
(6) 誤謬の訂正に関する注記 ○ ※ ○ ※
(7) 貸借対照表に関する注記 ×
(8) 損益計算書に関する注記 ×
(9) 株主資本等変動計算書に関する注記
(10) 税効果会計に関する注記 ×
(11) リースにより使用する固定資産に関する注記 ×
(12) 金融商品に関する注記 ×
(13) 賃貸等不動産に関する注記 ×
(14) 持分法損益等に関する注記 × ×
(15) 関連当事者との取引に関する注記 ×
(16) 一株当たり情報に関する注記 ×
(17) 重要な後発事象に関する注記 ×
(18) 連結配当規制適用会社に関する注記 × ×
(19) その他の注記
 企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」に基づく会計処理を行う場合に注記が必要となる。


83.本指針によることの注記

 本指針によって計算書類を作成した場合にはその旨を注記する必要がある。


84.役員と会社間の取引について

 役員の個人的な信用が重視される中小企業の特性を考慮して、役員と会社間との取引についても注記事項として開示することが望ましい。


85.電磁的方法による決算公告との関係

 電磁的方法により貸借対照表を公開することができる。この方法によれば注記による情報量の増加もそれほどの負担にはならない。


【関連項目】
会社計算規則第98条、第116条


 個別注記表の規定
 (会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く。)の個別注記表の場合)
<個別注記表> 会社計算規
則の規定
1. 重要な会計方針に係る事項に関する注記 (101)
  (a) 資産の評価基準及び評価方法  
  (b) 固定資産の減価償却の方法  
  (c) 引当金の計上基準  
  (d) 収益及び費用の計上基準  
  (e) その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項

 
2. 会計方針の変更に関する注記 (102の2)
  (a) 会計方針の変更の内容  
  (b) 会計方針の変更の理由  
  (c) 計算書類の主な項目に対する影響額

 
3. 表示方法の変更に関する注記 (102の3)
  (a) 表示方法の変更の内容  
  (b) 表示方法の変更の理由

 
4. 株主資本等変動計算書に関する注記 (105)
  (a) 当該事業年度の末日における発行済株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの発行済株式の数)  
  (b) 当該事業年度の末日における自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類ごとの自己株式の数)  
  (c) 当該事業年度中に行った剰余金の配当(当該事業年度の末日後に行う剰余金の配当のうち、剰余金の配当を受ける者を定めるための法第124条第1項に規定する基準日が当該事業年度中のものを含む。)に関する次に掲げる事項その他の事項
イ 配当財産が金銭である場合における当該金銭の総額
 配当財産が金銭以外の財産である場合における当該財産の帳簿価額(当該剰余金の配当をした日においてその時の時価を付した場合にあっては、当該時価を付した後の帳簿価額)の総額
 
  (d) 当該事業年度の末日における当該株式会社が発行している新株予約権(法第236条第1項第4号の期間の初日が到来していないものを除く。)の目的となる当該株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、種類及び種類ごとの数)

 
5. その他の注記 (116)

 個別注記表の例示
 (会計監査人設置会社以外の株式会社(公開会社を除く。)の個別注記表の場合)
1. この計算書類は、中小企業の会計に関する指針によって作成しています。

2. 重要な会計方針
(1)  資産の評価基準及び評価方法
  (a)  有価証券の評価基準及び評価方法
     ア  時価のあるもの
期末日の市場価格等に基づく時価法(評価差額は全部純資産直入法によって処理し、売却原価は移動平均法により算定しています。)
     イ  時価のないもの
移動平均法による原価法

  (b)  棚卸資産の評価基準及び評価方法
総平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しています。ただし、原材料は最終仕入原価法を採用しています。
(会計方針の変更)
従来商品については最終仕入原価法による原価法を採用していましたが、……により当期から総平均法による原価法に変更しました。この変更による影響は軽微です。

(2)  固定資産の減価償却の方法
  (a)  有形固定資産
定率法(ただし、平成10年4月1日以降に取得した建物(附属設備を除く。)は定額法)を採用しています。
     有形固定資産の各項目別の主な耐用年数についても記載することが考えられます。
この場合には、以下のような記載を追加することが考えられます。
なお、主な耐用年数は次のとおりであります。
建物        ○年〜○年
構築物       ○年〜○年
機械及び装置    ○年〜○年
工具、器具及び備品 ○年〜○年
    (会計方針の変更)
法人税法の改正に伴い、平成24年4月1日以後に取得した有形固定資産について、平成23年度改正後の法人税法に基づく減価償却の方法(250%定率法から200%定率法)に変更しています。これにより、営業利益、経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ○○百万円増加しています。

  (b) 無形固定資産
定額法を採用しています。
     無形固定資産の各項目別の主な耐用年数についても記載することが考えられます。
この場合には、以下のような記載を追加することが考えられます。
なお、主な耐用年数は次のとおりであります。
自社利用のソフトウェア ○年〜○年
のれん         ○年〜○年

(3)  引当金の計上基準
  貸倒引当金 債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権について法人税法の規定による法定繰入率により計上するほか、個々の債権の回収可能性を勘案して計上しています。
  賞与引当金 従業員の賞与支給に備えるため、支給見込額の当期負担分を計上しています。
  退職給付引当金 従業員の退職給付に備えるため、退職金規程に基づく期末要支給額により計上しています。
  (特則を適用している場合)
    なお、未償却の適用時差異残高は、×××千円(残存償却年数×年)であります。

(4)  その他計算書類の作成のための基本となる重要事項
  (a)  リース取引の処理方法
リース物件の所有権が借主に移転するもの以外のファイナンス・リース取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理によっています。
なお、未経過リース料総額は、×××千円であります。

  (b)  消費税等の会計処理
消費税等の会計処理は、税抜方式(又は税込方式)によっています。

3. 貸借対照表に関する注記
有形固定資産の減価償却累計額                 ×××千円

4. 株主資本等変動計算書に関する注記
(記載内容については、「株主資本等変動計算書に関する注記の例示」を参照。)

5. 重要な後発事象に関する注記
平成×年×月×日開催の取締役会において、○○○を決議いたしました。
これによる影響額は、×××千円であります。


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