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企業結合会計の概要
企業結合とは、ある企業又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることをいう。企業結合の形式としては、合併、会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転などの組織再編がある。
会計上は、このような組織再編の形式にかかわらず、企業結合の会計上の分類(取得16、共同支配企業の形成17、共通支配下の取引等18)に基づき結合企業(吸収合併存続会社、吸収分割承継会社、新設分割設立会社、事業譲受会社など)に適用すべき会計処理が決定される。したがって、ある企業結合が行われた場合、それがどの企業結合の会計上の分類に該当するのかを識別することが必要になる。
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資産及び負債の受入れに関する会計処理
企業結合が取得と判定された場合には、結合企業は被結合企業(吸収合併消滅会社、吸収分割会社、新設分割会社、事業譲渡会社など)から受け入れる資産及び負債に企業結合日の時価を付さなければならない。ただし、取得と判定された場合であっても、結合企業(取得企業)が受け入れる資産及び負債について、以下のいずれかの要件を満たす場合には、被結合企業(被取得企業)の適正な帳簿価額を付すことができる。
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企業結合日の時価と被結合企業の適正な帳簿価額との間に重要な差異がないと見込まれるとき |
(b) |
時価の算定が困難なとき
また、取得以外の企業結合の場合には、被結合企業の適正な帳簿価額を付さなければならない。ここで、適正な帳簿価額とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌して算定された帳簿価額をいう。したがって、企業会計の基準等に照らして帳簿価額に誤りがある場合には、その引継ぎに際して修正を行うことになる。
結合企業が受け入れる資産及び負債を時価以下の範囲で適宜に評価替えするような会計処理は認められない。 |
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対価の支払いに関する会計処理
企業結合が取得と判定された場合及び共通支配下の取引等のうち非支配株主との取引(親会社と子会社が合併する場合で、非支配株主が保有する子会社株式を交換する取引など)に該当する場合には、結合企業が交付する株式等の財は時価で測定しなければならない。ただし、株式等の財の時価の算定が困難な場合には、(2)により算定された資産及び負債の時価を基礎とした評価額(時価の算定が困難な場合には適正な帳簿価額による純資産額)を用いることができる。
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増加する株主資本の会計処理
企業結合が取得と判定された場合で対価として株式を交付したときは、払込資本(資本金、資本準備金及びその他資本剰余金のいずれか)を増加させる。
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適用関係
税制上の組織再編成の取扱いは、会計上の取扱いと異なり、適格組織再編成と非適格組織再編成とに分類される。なお、企業結合により移転する資産等の譲渡損益の税制上の取扱いと会計上の取扱いが異なる場合には、申告調整を行うこととなる。 |