中小企業の会計に関する指針
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 組織再編の会計(企業結合会計及び事業分離会計)


 要 点
組織再編には様々な形式(合併、会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転など)があるが、適用すべき会計処理は、企業結合の場合と事業分離の場合の2つに大別される。
企業結合が行われた場合、結合企業に適用すべき会計処理は、以下の3つの分類に基づき決定されるため、どの分類に該当するかを識別する必要がある。
(1)取得
(2)共同支配企業の形成
(3)共通支配下の取引等
事業分離が行われた場合、分離元企業に適用すべき会計処理は、分離元企業にとって移転した事業に対する投資が継続しているかどうかに基づき決定される。
投資が継続している場合(受取対価が株式のみで、その株式が子会社株式又は関連会社株式に該当する場合)には、損益は発生せず、投資が清算された場合(受取対価が現金の場合など)には、原則として、移転損益が発生する。


80.企業結合会計

(1)  企業結合会計の概要
企業結合とは、ある企業又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることをいう。企業結合の形式としては、合併、会社分割、事業譲渡、株式交換、株式移転などの組織再編がある。
会計上は、このような組織再編の形式にかかわらず、企業結合の会計上の分類(取得16、共同支配企業の形成17、共通支配下の取引等18)に基づき結合企業(吸収合併存続会社、吸収分割承継会社、新設分割設立会社、事業譲受会社など)に適用すべき会計処理が決定される。したがって、ある企業結合が行われた場合、それがどの企業結合の会計上の分類に該当するのかを識別することが必要になる。

(2)  資産及び負債の受入れに関する会計処理
企業結合が取得と判定された場合には、結合企業は被結合企業(吸収合併消滅会社、吸収分割会社、新設分割会社、事業譲渡会社など)から受け入れる資産及び負債に企業結合日の時価を付さなければならない。ただし、取得と判定された場合であっても、結合企業(取得企業)が受け入れる資産及び負債について、以下のいずれかの要件を満たす場合には、被結合企業(被取得企業)の適正な帳簿価額を付すことができる。
(a)  企業結合日の時価と被結合企業の適正な帳簿価額との間に重要な差異がないと見込まれるとき
(b)  時価の算定が困難なとき
また、取得以外の企業結合の場合には、被結合企業の適正な帳簿価額を付さなければならない。ここで、適正な帳簿価額とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行を斟酌して算定された帳簿価額をいう。したがって、企業会計の基準等に照らして帳簿価額に誤りがある場合には、その引継ぎに際して修正を行うことになる。
結合企業が受け入れる資産及び負債を時価以下の範囲で適宜に評価替えするような会計処理は認められない。

(3)  対価の支払いに関する会計処理
企業結合が取得と判定された場合及び共通支配下の取引等のうち非支配株主との取引(親会社と子会社が合併する場合で、非支配株主が保有する子会社株式を交換する取引など)に該当する場合には、結合企業が交付する株式等の財は時価で測定しなければならない。ただし、株式等の財の時価の算定が困難な場合には、(2)により算定された資産及び負債の時価を基礎とした評価額(時価の算定が困難な場合には適正な帳簿価額による純資産額)を用いることができる。

(4)  増加する株主資本の会計処理
企業結合が取得と判定された場合で対価として株式を交付したときは、払込資本(資本金、資本準備金及びその他資本剰余金のいずれか)を増加させる。

(5)  適用関係
税制上の組織再編成の取扱いは、会計上の取扱いと異なり、適格組織再編成と非適格組織再編成とに分類される。なお、企業結合により移転する資産等の譲渡損益の税制上の取扱いと会計上の取扱いが異なる場合には、申告調整を行うこととなる。

  16  一方の企業が他の企業を支配したと認められる企業結合で、共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合は、取得となる。
  17  複数の独立した企業が契約等に基づき、ある企業を共同で支配する企業結合
  18  親子間、または子会社間などグループ内の組織再編


81.事業分離会計

(1)  事業分離会計の概要
 事業分離とは、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む。)に移転することをいう。事業分離には、会社分割、事業譲渡などの組織再編がある。
 会計上は、分離元企業(吸収分割会社、新設分割会社、事業譲渡会社など)にとって、移転した事業に対する投資が継続しているか、それとも清算されたのかにより、適用すべき会計処理が決定される。

(2)  投資が継続している場合の会計処理
 投資が継続していると判定された場合には、分離元企業が分離先企業(吸収分割承継会社、新設分割設立会社、事業譲受会社など)から受け取った対価は、移転した事業の適正な帳簿価額に基づいて算定することになるため、財務諸表上、移転損益は発生しない。分離元企業が対価として株式のみを受け取り、その株式が子会社株式や関連会社株式に該当する場合には、投資は継続しているものとみなされる。

(3)  投資が清算された場合の会計処理
 投資が清算されたと判定された場合には、分離元企業が分離先企業から受け取った対価は時価で評価され、移転した事業の適正な帳簿価額との差額が移転損益として計上される。分離元企業が受け取った対価が現金等の財産である場合には、通常、投資が清算されたものとみなされる。

(4)  適用関係
 会計上は、企業結合会計と事業分離会計を区別して取り扱いが設けられているが、税制上はこのような区別ではなく、適格組織再編成と非適格組織再編成とに分類される。
 また、組織再編成により移転する資産等の譲渡損益の税制上の取扱いと会計上の取扱いが異なる場合には、申告調整を行うこととなる。


【関連項目】
会社計算規則第11条、第12条、第35条〜第52条等
企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号)
事業分離等に関する会計基準(企業会計基準第7号)
企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(企業会計基準適用指針第10号)


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