中小企業の会計に関する指針
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純資産


 要 点
純資産の部は、株主資本、株主資本以外の各項目に区分する。
株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金に区分する。
資本剰余金は、資本準備金、その他資本剰余金に区分する。
利益剰余金は、利益準備金、その他利益剰余金に区分する。
その他利益剰余金は、株主総会又は取締役会の決議に基づき設定される項目は、その内容を示す項目に区分し、それ以外は繰越利益剰余金に区分する。
株主資本以外の各項目は、評価・換算差額等、新株予約権に区分する。
期末に保有する自己株式は、株主資本の末尾において控除形式により表示する。
純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として、株主資本の各項目の変動事由を報告するために株主資本等変動計算書を作成する。


67.資本金

 資本金は、設立又は株式の発行に際して株主となる者が払込み又は給付した財産の額(払込金額)のうち、資本金として計上した額(会社法第445条)である。


68.剰余金

 剰余金は、払込資本を構成する資本剰余金と留保利益を表す利益剰余金に区分する。

(1)  資本剰余金
資本剰余金は、資本取引から生じた剰余金であり、以下の2つに区分する。
(a)  資本準備金
増資による株式の払込金額のうち資本金に組み入れなかった株式払込剰余金等、会社法第445条第2項により、資本準備金として積み立てることが必要とされているもの及びその他資本剰余金から配当する場合で、利益準備金と合わせて資本金の額の4分の1に達していないときに計上しなければならないもの(会社法第445条第4項)等である。
(b)  その他資本剰余金
資本剰余金のうち、会社法で定める資本準備金以外のものである。資本金及び資本準備金の取崩しによって生じる剰余金(資本金及び資本準備金減少差益)及び自己株式処分差益が含まれる。

(2)  利益剰余金
利益剰余金は、利益を源泉とする剰余金(すなわち利益の留保額)であり、以下の2つに区分される。
(a)  利益準備金
その他利益剰余金から配当する場合、資本準備金の額と合わせて資本金の額の4分の1に達していないときは、達していない額の利益剰余金配当割合(配当額のうちその他利益剰余金から配当する割合)か配当額の10分の1の額の利益剰余金配当割合のいずれか小さい額を計上しなければならない(会社法第445条第4項)。
利益準備金の額の減少により生じた「剰余金」は、減少の法的手続が完了したとき(会社法第448条及び第449条)に、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)に計上する。
(b)  その他利益剰余金
その他利益剰余金のうち、任意積立金(会社が独自の判断で積み立てるもので、特に目的を限定しない別途積立金、目的を限定した修繕積立金等、及び税法上の特例を利用するために設ける圧縮積立金や特別償却準備金等)のように、株主総会又は取締役会の決議に基づき設定される項目については、その内容を示す項目をもって区分し、それ以外については、「繰越利益剰余金」に区分する。
なお、株主資本等変動計算書において、当期首のその他利益剰余金に当期純損益や配当額などの当期の変動額を加減して当期末のその他利益剰余金が示される。


69.評価・換算差額等

 評価・換算差額等は、その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益等、資産又は負債に係る評価差額を当期の損益にしていない場合の評価差額(税効果考慮後の額)をその内容を示す項目をもって計上する。


70.自己株式

(1)  取得及び保有
自己株式の取得は、実質的に資本の払戻しとしての性格を有しているため、取得原価をもって純資産の部の株主資本の末尾において控除して表示する。自己株式の取得に関する付随費用は、営業外費用として計上する。

(2)  自己株式の処分
自己株式の処分の対価と自己株式の帳簿価額との差額が差益の場合は、「その他資本剰余金」として計上する。差損の場合は、「その他資本剰余金」から減額し、控除しきれない場合には、「その他利益剰余金(繰越利益剰余金)」から減額する。

(3)  自己株式の消却
自己株式の消却手続が完了した時点において、消却する自己株式の帳簿価額を「その他資本剰余金」から減額し、控除しきれない場合は、「その他利益剰余金(繰越利益剰余金)」から減額する。


71.株主資本等変動計算書

(1)  株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告するものである。

(2)  表示区分
株主資本等変動計算書の表示区分は、貸借対照表の純資産の部の表示に従う(第87項の貸借対照表及び損益計算書並びに株主資本等変動計算書の例示参照)。

(3)  表示方法
株主資本等変動計算書に表示される各項目の当期首残高及び当期末残高は、当期の貸借対照表の純資産の部における各項目の期首及び期末残高と整合したものでなければならない。

(4)  株主資本の各項目
当期首残高、当期変動額及び当期末残高に区分し、当期変動額は変動事由ごとにその金額を表示する。なお、当期純利益(又は当期純損失)は、株主資本等変動計算書において、その他利益剰余金又はその内訳項目である繰越利益剰余金の変動事由として表示する。

(5)  株主資本以外の各項目
当期首残高、当期変動額及び当期末残高に区分し、当期変動額は純額で表示する。ただし、当期変動額について主な変動事由ごとにその金額を表示又は注記することができる。

(6)  注記事項
株主資本等変動計算書の注記事項については、第87項の貸借対照表及び損益計算書並びに株主資本等変動計算書の例示参照。


【関連項目】
会社計算規則第22条〜第29条、第53条、第59条、第96条、第105条等
企業会計原則 第一・三、注解2、第三・四(三)、注解19
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(企業会計基準第5号) 第4項〜第8項、第36項等
自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準(企業会計基準第1号) 第7項〜第14項、第20項、第21項
株主資本等変動計算書に関する会計基準(企業会計基準第6号)
株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第9号)
法人税法第2条第16号〜第18号、第24条第1項第4号
法人税法施行令第23条第3項


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