中小企業の会計に関する指針
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固定資産


 要 点
固定資産の減価償却は、経営状況により任意に行うことなく、定率法、定額法その他の方法に従い、耐用年数にわたり毎期継続して規則的な償却を行う。
圧縮記帳は、原則としてその他利益剰余金の区分における積立て及び取崩しにより行う。
予予測できなかった著しい資産価値の下落があった際には、取得原価を減額しなければならない。なお、当該減損額は、減損損失として損益計算書の特別損失に計上する。
ゴルフ会員権は取得原価で評価する。ただし、時価があるものについて時価が著しく下落した場合又は時価がないものについて発行会社の財政状態が著しく悪化した場合には、減損処理を行う。


33.固定資産の取得価額

 有形固定資産及び無形固定資産の取得価額は、次のとおりとする。

(1)  原 則
固定資産の取得価額は、購入代価等に、買入手数料、運送費、引取運賃、据付費、試運転費等の付随費用を加えた金額とする。

(2)  少額の付随費用
付随費用が少額である場合は、取得価額に算入しないことができる。

(3)  少額の減価償却資産
減価償却資産のうち取得価額が少額のものについては、その取得した事業年度において費用処理することができる。


34.固定資産の減価償却

(1)  減価償却の方法
 有形固定資産の減価償却の方法は、定率法、定額法その他の方法に従い、耐用年数にわたり毎期継続して適用し、みだりに変更してはならない。なお、減価償却は、固定資産を事業の用に供したときから開始する。
 減価償却における耐用年数や残存価額は、その資産の性質、用途、使用状況等に応じて合理的に決定しなければならない。ただし、法人税法上の耐用年数を用いて計算した償却限度額を減価償却費として計上することも認められる。
 算定された減価償却費は、その性質に応じて製品原価又は期間費用として処理する。資産の陳腐化その他一定の事由により使用可能期間が従来の耐用年数に比して著しく短くなった場合は、未経過使用可能期間(使用可能期間のうちいまだ経過していない期間)にわたり減価償却を行う。
 租税特別措置法による特別償却のうち、一時償却額は、重要性の乏しい場合を除きその他利益剰余金の区分における積立て及び取崩しにより繰延税金負債を控除した金額を特別償却準備金として計上する。
 なお、無形固定資産の減価償却の方法は、定額法その他の方法に従い、有効期間にわたり毎期継続して適用する。

(2)  貸借対照表上の表示
 有形固定資産の減価償却累計額は、原則として有形固定資産の各項目ごとに控除形式で表示する。
 ただし、有形固定資産全体から一括して控除形式で表示する方法、又は有形固定資産の各項目から直接控除して注記する方法によることもできる。
 無形固定資産の減価償却累計額は、無形固定資産の各項目から直接控除した残高で表示する。


35.圧縮記帳

 固定資産の圧縮記帳の会計処理は、原則として、国庫補助金や保険金等を損益計算上、収益として計上する。その場合、その他利益剰余金の区分において圧縮額から繰延税金負債を控除した純額を圧縮積立金として計上する。減価償却資産については、その耐用年数にわたり、減価償却に対応して 、また、非減価償却資産については、譲渡時に圧縮積立金を取崩す。
 なお、国庫補助金、工事負担金等で取得した資産については、固定資産の取得価額から直接減額する方式による圧縮記帳をすることができる。また、交換、収用等及び特定の資産の買換えで交換に準ずると認められるものにより取得した固定資産についても、直接減額方式に準じた処理も認められる。


36.有形固定資産及び無形固定資産の減損

 固定資産について予測することができない減損が生じたとき又は減損損失を認識すべきときは、その時の取得原価から相当の減額をしなければならない。
 減損損失の認識及びその額の算定に当たっては、減損会計基準の適用による技術的困難性等を勘案し、本指針では、資産の使用状況に大幅な変更があった場合に、減損の可能性について検討することとする。
 具体的には、固定資産としての機能を有していても次の(a)(b)のいずれかに該当し、かつ、時価が著しく下落している場合には減損損失を認識する。
(a)将来使用の見込みが客観的にないこと
 資産が相当期間遊休状態にあれば、通常、将来使用の見込みがないことと判断される。
(b)固定資産の用途を転用したが採算が見込めないこと

 なお、固定資産の減損損失累計額は、減価償却累計額に準じて表示する。


37.ソフトウェア

 研究開発に該当するソフトウェアの制作費は研究開発費として費用処理する。研究開発に該当しないソフトウェアの制作費は、次のように会計処理する。

(1)  社内利用のソフトウェアは、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、取得に要した費用を無形固定資産として計上する。

(2)  市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、無形固定資産として計上する。

 無形固定資産として計上したソフトウェアは、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却する。ただし、法人税法の定める償却方法を採用することもできる。
 なお、販売・使用見込みがなくなった場合には、未償却残高を費用として一時に償却する必要がある。


38.ゴルフ会員権

(1)  ゴルフ会員権の評価
ゴルフ会員権は、取得原価で評価する。ただし、ゴルフ会員権の計上額の重要性が高い場合で、以下の要件に該当するときは、減損処理を行う。
(a)  時価があるゴルフ会員権・・・時価が著しく下落したとき
(b)  時価のないゴルフ会員権・・・発行会社の財政状態が著しく悪化したとき

(2)  預託保証金方式によるゴルフ会員権を減損する場合の会計処理
預託保証金方式によるゴルフ会員権の時価が著しく下落したことにより減損処理する場合には、帳簿価額のうち預託保証金を上回る金額について、まず直接評価損を計上し、さらに時価が預託保証金の額を下回る場合には、当該部分を債権の評価勘定として貸倒引当金を設定する。ただし、預託保証金の回収が困難な場合には、貸倒引当金を設定せずにゴルフ会員権から直接控除することができる。


【関連項目】
会社計算規則第5条第2項、第3項第2号、第153条第2項
企業会計原則 第一・五、注解3
企業会計原則 第三・五
固定資産の減損に係る会計基準(企業会計審議会)
研究開発費等に係る会計基準(企業会計審議会) 三及び四
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号) 第12項、第135項、第223項、第311項
法人税法第33条第2項
法人税法施行令第68条
減価償却資産の耐用年数等に関する省令


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