中小企業の会計に関する指針
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棚卸資産


 要 点
棚卸資産には、商品又は製品、半製品、仕掛品、主要原材料、補助原材料、消耗品で貯蔵中のもの、その他これらに準ずるものが含まれる。
棚卸資産の取得価額は、取得の態様に応じて購入代価又は製造原価に引取費用等の付随費用を加算する。ただし、少額な付随費用は取得価額に加算しないことができる。
棚卸資産の期末における時価が帳簿価額より下落し、かつ、金額的重要性がある場合には、時価をもって貸借対照表価額とする。この場合の時価は、正味売却価額をいう。
棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法等、一般に認められる方法とする。なお、最終仕入原価法も、期間損益の計算上著しい弊害がない場合には、用いることができる。
棚卸資産について、災害等による時価の下落に応じて簿価を切り下げ、かつ、その金額について重要性があるものについては、注記等により帳簿価額切下額を表示することが望ましい。


25.棚卸資産の範囲

 棚卸資産には、商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)、半製品、仕掛品(半成工事を含む。)、主要原材料、補助原材料、消耗品で貯蔵中のもの、その他これらに準ずるものが含まれる。
 なお、本指針における棚卸資産とは、通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産をいうものとする。


26.棚卸資産の取得価額

(1)  取得価額
 棚卸資産の取得価額は、次のとおりとする。
(a)  購入した棚卸資産
その資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)とその資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額の合計額
(b)  自己の製造等に係る棚卸資産
その資産の製造等のために要した原材料費、労務費、及び経費の額とその資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額の合計額
(c)  上記以外の方法により取得をした棚卸資産
その取得の時におけるその資産の取得のために通常要する価額とその資産を消費し又は販売の用に供するために直接要した費用の額の合計額

(2)  少額の付随費用
 整理、選別、手入れ等に要した費用の額その他一定の費用の額で少額の付随費用等は、取得価額に算入しないことができる11

  11  法人税法では、付随費用が当該棚卸資産の購入対価のおおむね3%以内の金額である場合には、その取得価額に算入しないことができるとしている。


27.棚卸資産の評価基準

(1)  棚卸資産は、取得原価を貸借対照表価額とすることを原則とする。なお、期末における時価が帳簿価額より下落し、かつ、金額的重要性がある場合には、時価をもって貸借対照表価額とする。
 なお、次の事実が生じた場合には、その事実を反映させて帳簿価額を切り下げなければならないことに留意する必要がある。
(a)棚卸資産について、災害により著しく損傷したとき
(b)著しく陳腐化したとき
(c)上記に準ずる特別の事実が生じたとき

(2)  (1)における時価とは、原則として正味売却価額(売却市場における時価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除した金額)をいう。

(3)  棚卸資産につき上記(1)の事実が生じたことにより、帳簿価額を切り下げる場合、有価証券では、「50%程度以上下落」と具体的に割合が示されているが、棚卸資産については、棚卸資産の種類や市場の状況等の特性を勘案し、個別に判断する。


28.棚卸資産の評価方法

 棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法等、一般に認められる方法による。
 なお、期間損益の計算上著しい弊害がない場合には、最終仕入原価法を用いることもできる。


29.損益計算書上の表示及び注記

(1) 棚卸資産に係る簿価切下額は、次のとおり表示する。
 (a) (b)、(c)以外のもの ・・・売上原価
 (b) 棚卸資産の製造に関連して発生するもの ・・・製造原価
 (c) 臨時の事象に起因し、かつ、多額であるもの ・・・特別損失

(2)  棚卸資産に係る簿価切下額のうち、重要性のあるものについては、注記による方法又は売上原価等の内訳項目として表示することが望ましい。


【関連項目】
会社計算規則第5条、第74条
企業会計原則 第三・五、注解21
棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)
法人税法第29条
法人税法施行令第28条〜第33条、第68条
法人税基本通達5−1−1


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