中小企業の会計に関する指針
 有価証券(19−24) [メニューへ] [前 へ] [次 へ]

有価証券


 要 点
有価証券(株式、債券、投資信託等)は、保有目的の観点から、以下の4つに分類し、原則として、それぞれの分類に応じた評価を行う。
  (1) 売買目的有価証券
  (2) 満期保有目的の債券
  (3) 子会社株式及び関連会社株式
  (4) その他有価証券
有価証券は、「売買目的有価証券」に該当する場合を除き、取得原価をもって貸借対照表価額とすることができる。ただし、「その他有価証券」に該当する市場価格のある株式を多額に保有している場合には、当該有価証券は時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額(税効果考慮後の額(第61項参照))は純資産の部に計上する。
市場価格のある有価証券を取得原価で貸借対照表に計上する場合であっても、時価が著しく下落したときは、将来回復の見込みがある場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は特別損失に計上する。


19.有価証券の分類と会計処理の概要

 有価証券は、保有目的等の観点から以下の4つに分類し、それぞれ次のように会計処理する。

分 類 貸借対照表価額 評価差額
売買目的有価証券 時 価 損益(営業外損益)
満期保有目的の債券 償却原価
(取得原価)
償却原価法による差額:営業外損益
子会社株式及び
関連会社株式
取得原価 該当なし
その他有価証券 市場価格あり 時 価 純資産の部(税効果考慮後の額)
(全部純資産直入法の場合)
市場価格なし 取得原価
(債券:償却原価)
該当なし
(償却原価法による差額:営業外損益)


(1)  売買目的有価証券
売買目的有価証券とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券をいう。売買目的有価証券については、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益(営業外損益)として処理する。本指針においては、売買目的有価証券とその他有価証券との区分を法人税法の規定に従って分類することも認められる。法人税法の規定において、売買目的有価証券とは、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券(企業支配株式5を除く。)であって、以下に掲げるものとされている。
(a)  専担者売買有価証券(トレーディング目的の専門部署を設置している場合に、その目的のために取得した有価証券)
(b)  短期売買有価証券(短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載した有価証券)
(c)  金銭の信託に属する有価証券(金銭の信託のうち信託財産として短期売買目的の有価証券を取得する旨を他の金銭の信託と区分して帳簿書類に記載したもの)

(2)  満期保有目的の債券
 満期保有目的の債券とは、満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(満期まで所有する意図をもって取得したものに限る。)をいう。満期保有目的の債券については、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、取得価額と債券金額の差額が金利の調整と認められるときは、償却原価法によ り処理する。

(3)  子会社株式及び関連会社株式
子会社株式及び関連会社株式については、取得原価をもって貸借対照表価額とする。

(4)  その他有価証券
 その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいい、これには長期的な価格の変動を利用して利益を得る目的の株式、取引先等の業務上の関係から長期保有する有価証券等が含まれる。
 その他有価証券について、市場価格のある場合には、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額(税効果考慮後の額)は洗替方式に基づき、全部純資産直入法6又は部分純資産直入法7により処理する。ただし、市場価格のあるその他有価証券を保有していても、それが多額でない場合8には、取得原価をもって貸借対照表価額とすることもできる。
 また、その他有価証券について、市場価格のない場合には、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
 なお、債券について、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする。

   5  法人の特殊関係株主等がその法人の発行済株式の総数又は出資金額の20%以上に相当する数の株式又は出資をする場合における、その特殊関係法人等の有する法人の株式又は出資をいう。
   6  評価差額(税効果考慮後の額)の合計額を純資産の部に計上する方法
   7  時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額(税効果考慮後の額)は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として計上する方法
   8  保有が多額であるか否かについては、総資産に対する有価証券の占める割合や評価差額の重要性等、有価証券の保有が財政状態に与える影響を総合的に勘案して判断することが考えられる。


20.有価証券の取得価額

 有価証券の取得時における付随費用(支払手数料等)は、取得した有価証券の取得価額に含める。なお、期末に保有している有価証券を時価評価する場合、その時価には取得又は売却に要する付随費用を含めない。


21.有価証券の評価方法

 取得原価の評価方法は、移動平均法又は総平均法による。


22.有価証券の減損

(1)  市場価格のある有価証券の減損処理
 満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券のうち市場価格のあるものについて、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。
 市場価格のある有価証券の時価が「著しく下落した」ときとは、少なくとも個々の銘柄の有価証券の時価が、取得原価に比べて50%程度以上下落した場合をいう。この場合には、合理的な反証がない限り、時価が取得原価まで回復する見込みがあるとは認められないため、減損処理を行わなければならない。

(2)  市場価格のない有価証券の減損処理
 市場価格のない株式について、発行会社の財政状態の悪化9により実質価額10が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。
 市場価格のない株式の実質価額が「著しく低下したとき」とは、少なくとも株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合をいう。ただし、市場価格のない株式の実質価額について、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の減額をしないことも認められる。
 なお、有価証券の減損処理を行った場合には、当該時価((1)の場合)又は実質価額((2)の場合)を翌期首の取得原価とする。

 有価証券の減損処理について、法人税法に定める処理に拠った場合と比べて重要な差異がないと見込まれるときは、法人税法の取扱いに従うことが認められる。

   9  財政状態の悪化とは、一般に公正妥当と認められる会計基準その他の企業会計の慣行に従って作成した計算書類を基礎に、原則として、資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額が、当該株式の取得時と比較して、相当程度下落している場合をいう。
  10  実質価額は、通常、1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額であるが、会社の超過収益力等を考慮に入れることができる。


23.貸借対照表上の表示

 売買目的有価証券及び事業年度の末日後1年以内に満期の到来する社債その他の債券は流動資産に属するものとし、それ以外の有価証券は、投資その他の資産に属するものとする。
 したがって、保有する株式がその他有価証券に該当する場合には、投資有価証券(固定資産)として記載する。
 なお、子会社株式及び関連会社株式に該当する場合には、関係会社株式(固定資産)として記載する。


24.損益計算書上の表示

 有価証券の売却損益の損益計算書上の表示区分は、次のようになる。

有価証券の分類 売却損益の表示区分等
売買目的有価証券 営業外損益(売却益と売却損は相殺する。)
子会社株式及び関連会社株式 特別損益(売却益と売却損は相殺しない。)
その他有価証券 臨時的なもの・・特別損益
(業務上の関係を有する株式の売却等)
それ以外・・・・営業外損益
(市場動向の推移をみながら売却することを目的として取得したもの(純投資目的)等)


【関連項目】
会社計算規則第5条第3項第1号、第2号、第6項、第74条第3項第1号ヘ、第4号イ、第82条第1項
金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号) 第15項〜第23項
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号) 第47項〜第96項
法人税法第61条の3第1項第1号
法人税法施行令第68条、第119条の12


 有価証券(19−24) [メニューへ] [前 へ] [次 へ]