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大学発ベンチャーが、人体装着型ロボットで高齢化社会に光明

(17/02/16)

 お掃除ロボット、癒しロボット、レスキューロボットから、天井裏点検ロボット、ロボットホテルまで、ロボットが活躍する舞台が今、大きく広がっている。広がる舞台の中でも、ひときわ目立つ檜舞台に立つと見られるのが、ウェアラブル(人体装着型)ロボットだ。イノフィス(東京、藤本隆社長)は同分野でトップクラスの導入実績を誇る一社。大学発ベンチャーとして立ち上がって3年余。介護・リハビリ、製造、建設、物流、農業といった各現場での「きつい作業」を軽くする同社製品への期待は高まるばかりだ。

 イノフィスは小林宏東京理科大学教授の研究成果となる「マッスルスーツ」の事業化を目的に、理科大発ベンチャーとして2013年に発足した。試作や産学連携に力を入れる中堅メーカーも出資し、2015年には産業革新機構や金融機関、ベンチャーキャピタルも株主に加わり今日に至る。「人の役に立つものを創る。それがエンジニアの本懐」。同社創業者で、研究開発の中核を担う小林教授は、自身の立ち位置をそう説明する。

 マッスルスーツは、ゴムチューブとナイロンメッシュで形成する「人工筋肉」の働きにより、重いものを持ち上げたり持ち下げたりする際の身体、とくに腰にかかる負担を大幅に軽減できる。外骨格型の筋力増強装置であり「ウェアラブルロボット」という分類に属する。2014年11月の発売以来、1500台を超える導入実績を誇り、この種の製品では最も売れている一つとなる。もっとも小林教授は、ロボット全般の今日的状況を「話題性はあるものの、普及や実用化の面ではまったく物足りない」と、まだ夜明け前と捉えている。

 同社では、普及・実用化を加速すべく、使いやすさを高めたり、各利用シーンに対応するシリーズ製品を開発したりと、日々、マッスルスーツの進化・発展に励んでいる。小林教授は「頭の中に10個以上のアイデアがある」といい、今後、アイデアを次々と形にしようとしている。その際、小林研究室の学生たちも貴重な戦力となる。小林教授は「学生にとっては、机上の空論でなく、実際のニーズに即した改良改善に取り組むことが、真の教育にもなっている」と大学発ベンチャーならではの効用を説く。

 これから先、少子高齢化の進行に伴い、老々介護の問題がさらに深刻化し、人手不足が恒常化するとの懸念も強まっている。いきおい、高齢者や女性の出番が増えて、重労働を軽労働に変えるウェアラブルロボットのニーズは膨らむばかりと考えられる。「研究のための研究ではなく、実用化を重視した研究を進めてきてマッスルスーツに行き着いた」。こう話す小林教授の「本願成就」は、課題先進国・日本の課題解決に直結する。

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