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士業の専門家とAIの力で中小企業の成長発展を後押し

(17/01/19)

 ココペリインキュベート(東京)の近藤繁社長は元バンカー。大手銀行で500社以上の中小企業に融資をした経験を持つ。その経験を踏まえて立ち上げた同社では、中小・ベンチャー企業の成長支援をミッションに掲げ、中小企業と専門家の橋渡しや、AI(人工知能)による融資審査モデルの開発、普及に取り組んでいる。そこには「過酷な生存競争の中であえなく倒産する中小企業を数多く見てきた。倒産に直面するたびに、銀行員としてもっと何かできることはなかったのかと自問自答した」(近藤社長)との悔恨があり、自問自答の「解」を実行に移している。

 同社は近藤社長が10年前の2007年に設立した。近藤社長は銀行からITベンチャーに転職。ところが、そのベンチャーが上場目前に会社詐欺に遭って倒産してしまう。バンカーとして多くの倒産劇を目にしたのに続く、当事者として味わった苦い思いについて、近藤社長は「人材不足による経営基盤の脆弱さを痛感した」と振り返る。この実体験も中小・ベンチャー支援会社を興した大きな要因となった。

 同社が今、力を入れるのが、中小・ベンチャー企業が抱えるさまざまな経営課題を解決するための相談プラットフォーム事業だ。同事業は弁護士、社労士、税理士、行政書士など士業の専門家と、経営相談をしたい会員企業とのマッチングを図り、ウェブ上でのスポット相談を実現させるもの。AIが会員企業の財務テータを自動的に分析して経営課題を抽出、役立つレポートを瞬時に出力するといった機能も付与した。それらが評価され同事業は「日本最大級の専門家相談サイト」と謳うまでに成長した。

 AIに関しては、有力銀行や東京大学などとの産学連携プロジェクトとして、AIとビッグデータの融合による新たな融資審査モデルの開発も手がけている。現在、実証テストから実用化への道筋を探っている段階だ。同モデルは金融機関が中小企業への融資の審査をする際に、ややもすると信用リスクを評価できず適切な判断を下せないといった現状を踏まえて作製。リスクの評価精度を飛躍的に高められ、スピーディな融資が可能となり、ひいては融資の増大につながるとしている。

 社名の「ココペリ」は、ネイティブインディアンの精霊を意味する。その精霊は人間と神様の中間に位置し、人の祈りを神に運ぶ媒介者の役割を果たすとされる。近藤社長は「中小企業を支えるエコシステムの一員としてパートナーシップをさらに深化させる」と、中小企業を、より高みに導くためのココペリ(媒介者)の役回りを演じ切ろうとしている。日本一のNo2(サポート会社)も標榜する同社が目指すのは“助演男優賞”といったところか。

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