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毛細血管を観察、解明し、健康管理に一役買う

(17/01/05)

 毛細血管が健康と深く関わることが分かってきた。今夏、放映されたNHKテレビ「ガッテン!/毛細血管ケア」では、毛細血管の減少・劣化が体の機能低下や病気につながると解説し、減少・劣化の防止に役立つ体操や食材を紹介した。その毛細血管に早くから着目して、毛細血管観察装置を製品化し、納入実績を伸ばしているのが「あっと」(大阪市、武野團社長)だ。同社では今後、大阪大学との共同研究に基づく新たな知見も取り込んで、毛細血管ケア事業を進化発展させていく。

 あっとは2009年に武野社長が設立した。同社を語るには、武野社長の父親に触れないわけにはいかない。事業家で発明家であった父親は、がんに罹患し、さまざまな療法を試す過程で、療法の効果を計測する装置がないことを知る。計測装置への関心を高めていく中、毛細血管を観察する装置の開発に至る。2009年、大腸がんのため他界。その後を継ぐ形で、会社員だった武野社長が会社を辞めて起業し、父親が開発した装置をモデファイした「毛細血管スコープ」を世に出す。

 同スコープを使うと、無採血で、体内を流れる血液をリアルタイムで観察できるようになる。毛細血管の長さ、太さといった基本的な形状も把握できる。それらによって、身体の微細な変化も素早く察知できるという。武野社長は「未病(病気というほどではないが健康でもない状態)の人たちも毛細血管に異常が出るので、健康管理の一助になる」と自社製品をアピールする。

 同社が現在、力を入れているのが、毛細血管のチェックを起点とする、生活習慣病などの予防法の確立、あるいは早期診断につながる技術の開発だ。これまでに毛細血管はヘアピン状が正常だと知られているが、毛細血管の境界を明確に抽出するのは難しいといったことから疾病との相関を示す研究はあまり進んでいない。研究を推し進めるべく、同社は、阪大医学部と共に「指先の毛細血管画像の数値化」に取り組み、今年1月に成功。こうした成果を、毛細血管と疾病の相関研究に役立てていき、各種疾病の予防や早期診断に結びつける考えだ。

 同社のスコープは薬局やクリニック、フィットネス施設などに累計約600台の納入実績を誇る。これまではハードウエアの売り切りモデルが主体だったが、阪大との研究成果などを踏まえ「これからはデータの解析サービスに重心を移す。そのため、クラウド化やIoT化も進めていく」(武野社長)と新たな針路に舵を切っていく。冒頭の「ガッテン!」では同社が機材協力し、大きな反響があった。今月初めには毛細血管にまつわる健康本が刊行されている。上昇気流をとらえて、空高く羽ばたく同社である。

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