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次世代放射線がん治療装置を開発、米国から世界へ広める

(16/12/08)

 国民の二人に一人はがんになり、三人に一人ががんで亡くなる時代を迎えている。がん治療の重要性は高まるばかり。そんな中、放射線治療装置の次世代版を開発し“日帰りがん治療”を広めようとしているのがアキュセラ(川崎市、田辺英二社長)だ。同装置はロボット技術に基づく動体追跡機能などで、ピンポイントの放射線治療を実現するもの。昨年10月にFDA(米国食品医薬品局)の認可を取得しており「先端医療は米国から始まるので米国から普及させていく」田辺社長)と、世界を見据えた事業プランを描いている。

 同社は2005年(平成17年)に田辺社長が立ち上げた。田辺社長は米国留学の延長で1980年代半ばにシリコンバレーで起業し、80年代後半には、エレクトロニクス製品の開発や輸出入を手掛けるエーイーティーを川崎市に設立している。そんな田辺社長の、米国の大学、企業で学び身につけた高電界加速器やハイパーサーミア(温熱療法)に関する知見と、エーイーティーのX線発生装置などの開発成果が結合し、次世代放射線治療の実用化を目指すアキュセラが誕生する。

 同社の次世代放射線治療装置は、高エネルギーX線発生小型加速器、ロボット型ナロービーム高精度制御・放射線治療装置、高スループット動体追跡装置、4次元X線治療計画&リアルタイム治療効果検証システムなどで構成する。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトで北海道大学などと共同開発したロボット型治療装置、ロボット治療台といった成果も反映された小型高精度のX線治療システムとなる。

 「スタティック(静的)なものなら比較的簡単だが、動くものを対象にする「空中戦」は容易でない。それを可能にするのが当社の装置」。田辺社長は、身体の中で複雑に動く臓器のがんに対してもピンポイント攻撃を仕掛けられると、その持ち味を説明する。米国暮らしが長い田辺社長は「米国では小規模クリニックでの、がん放射線治療が普及している」とも解説。それらのリプレース需要の掘り起こしから手掛けていき、日本発の照射技術による“日帰りがん治療”を世界に広めていく。

 田辺社長は企業経営に携わる一方で、東大講師を務め、「市民のためのがん治療の会」の立ち上げに尽力するなど、活動範囲は広く、興味関心は多岐にわたっている。80年代のシリコンバレーを知る身として「日本ではイノベーションという言葉がよく理解されていないと感じる。大学も教育システムも大きく変わっていかなければ…」と、変革の必要性を強調する。日米両国で起業を続けたシリアルアントレプレナー(連続起業家)は、率先垂範、この国に変革のうねりを巻き起こそうともしている。

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