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『真面目な水商売』で世界の水問題を解決する

(16/11/10)

 「真面目な水商売をやっています」−ワイズグローバルビジョン(沖縄県うるま市)の柳瀬良奎社長がよく使う“決めゼリフ”の一つだ。水商売の中身は、船舶での利用にうってつけな小型海水淡水化装置など各種水処理装置の製造販売。同社では、同事業を通して“水の地産地消”を推し進め、さらに「水のスモールインフラを構築する」(柳瀬社長)と意気込んでいる。

 同社は大手総合商社、外資系コンサルティング会社などを経た柳瀬社長が、2012年(平成24年)に立ち上げた。柳瀬社長が沖縄の海水淡水化装置の研究者と出会ったのが始まりで、その技術にほれこみ、また二人が意気投合したことから会社設立に至る。主力製品は「オーシャンピュア」と名付けた、片手で持ち運べる小型軽量の海水淡水化装置。独創の逆浸透膜ユニットの働きにより、厚労省が定める水道法水質基準をクリアする水を、1時間当たり40リットルの規模でつくり出す。

 「オーシャンピュアを船舶に持ち込むと、大量のペットボトルを積んだりすることが要らなくなる」。柳瀬社長は、導入メリットを分かりやすく説明する。実際、小型漁船などでの需要が伸びており、洋上建造物や陸上・沿岸部での利用実績も出てきているという。また、水問題が日本とは比較にならないほど大きな課題となっているアジア・アフリカ諸国での実績が急増しており「国内より海外市場がメインになっていく」(柳瀬社長)と先々を見通している。

 同社では海水淡水化装置のほか、雨水、河川の水、プールの溜り水を飲み水にする非常時用浄水器や、水道水をミネラルウォーターやシリカ水(ケイ素水)に変えるといった各種浄水器も商品化している。そのうち水道水→ミネラルウォーターの浄水器は、沖縄のクチャ(海泥)や化石サンゴのペレットをフィルター内に配することで、海洋ミネラルたっぷりのおいしい飲料水を手軽につくれるのが売り物で、ヒット商品に育っている。

 柳瀬社長は「ペットボトルやウォーターサーバーが水を運搬する事業であるのに対し、我々のビジネスモデルは、目の前の水が泥水でも海水でも飲料水となる“水の地産地消”を促すもの」と、自社の特性、優位性を説明する。同社では、新規事業として、ミニプラントによる水の販売に乗り出すなど、水関連の事業を幅広く展開。「水のスモールインフラ構築」を標榜し世界に羽ばたこうとしている。事業拡大に向け、広く提携先を求めてもいる。その際の決めゼリフは「のどもサイフも潤うウィンウィン」―。「真面目な水商売」に負けず劣らずの名文句?が、たくさんのパートナーを惹きつけそうだ。

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