e中小企業コラム
「e中小企業コラム」一覧へ

平家とうふ+大豆由来食品の二刀流で“豆腐屋”新モデルを

(16/10/27)

 平家と豆腐。意表を突く組み合わせの「平家とうふ」を製造販売しているのが、商品名に負けず劣らず社名もユニークな「ねこのくら工房」(富山県南砺市、宮脇廣代表)だ。同社では、この看板商品「平家とうふ」の一方で、「畑のソーセージ」「畑のテリーヌ」「五筒山ぎょうざ」「食べる豆乳」といった新商品もラインナップ。「守るものは守り、新しいものを上乗せする」(宮脇代表)と、守りと攻めの両面作戦で“豆腐屋”の新モデルを築いていく。

 ねこのくら工房の正式名は農事組合法人・五筒山特産組合。同組合は昭和57年(1982年)に宮脇氏が叔父と共に木工家具を製造するため立ち上げた。しかし、バブル崩壊のあおりを受け、家具メーカーの事業環境は急激に悪化し商売替えを余儀なくされる。「たまたま一緒に働いていた仲間の実家が豆腐屋だった」(同)のがきっかけとなり、平成17年(2005年)、豆腐工房・ねこのくら工房として再出発。家具から豆腐へと、大胆な業種転換を図る。ちなみに、ねこのくらのネーミングは近くの地名に由来するという。

 同工房の「平家とうふ」は地元・富山産の大豆と、天然にがりを使用し、消泡剤は用いず、昔ながらの自然な製法にこだわる。こうしたオーソドックスなスタイルがヘルシー・ナチュラル志向の時流に合致して、富山はもちろん東京でも販売されるほど広まっている。宮脇代表の子息がアトピー性皮膚炎に苦しんだのが、添加物ゼロ、ナチュラル志向の原点になった。「平家」を打ち出したのは、工房のある南砺市下梨が、平家の落人が逃れ住んだ地と言い伝えられているためで、この物語性に富む商品名も販売促進に寄与している。

 「平家とうふ」は人気商品として定着した。しかし、少子化や食生活の変化を見通すと、豆腐だけの“一本足打法”では心もとない。そこで第2の柱を目指し商品化したのが「畑のソーセージ」など。名前の通り、肉の代わりに大豆由来品を原料とする食品群で、豆腐の製造工程で生じる豆乳を活用する。富山県食品研究所が開発した、豆乳を固形化する「豆乳の成分分離技術」で作り出す中間素材=固形状の豆乳を、ソーセージ、テリーヌ、ぎょうざ…と変幻自在に変えていく。数年前から取り組み、品ぞろえを増やしているところだ。

 さらに昨秋には中間素材を「食べる豆乳」の商品名で発売した。各顧客に、食べる豆乳を材料とするユニークな食品を開発してもらおうというもの。「畑のソーセージ」などは賞味期限から売れ残りのリスクがある。その点、長期保存が可能な「食べる豆乳」は、売る方にも買う方にもメリットが多いと見極め商品化した。これまでにレストランや旅館が顧客となり、販路は着実に広がっているという。伝統の豆腐に、革新の大豆由来食品群を加えた二刀流で、平家の末裔(?)が平成の世に旋風を巻き起こそうとしている。

〔当サイトのコンテンツは中小企業庁・中小企業基盤整備機構の許可を得て掲載しています。〕
Copyright(c) Organization for Small and Medium Enterprises and Regional Innovation, Japan All rights reserved.
Copyright 著作権マーク SEIKO EPSON CORPORATION , All rights reserved.