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“売る力”身につけ、シャワーヘッドを売りまくる

(16/09/23)

 「中小企業の製品が売れない一番の理由は、売る場所をつくれない、売るステージをつくるのが苦手な点にある」。節水シャワーヘッドなどを製造販売する田中金属製作所(岐阜県山県市)の田中和広社長は、自身の体験に基づき、売ることの難しさをそう説明する。そんな中小企業の典型であった同社が、今では「売る場所を選んでいる」と言えるまでに様変わり。そこには“売れる製品”の開発と、“売る力”の獲得−の二つがあり、二つが掛け合わされたシナジー(相乗)効果が、同社に劇的な変化をもたらした。

 同社の前身は1965年(昭和40年)、田中社長の父親が旋盤1台で興した田中鉄工所で、1994年(平成6年)に現行の田中金属製作所として再発足する。同社の所在地、岐阜・山県は水栓バルブ発祥の地として知られ、多くの関連業者が集積した。同社も水栓部品を製造する下請け業務に励んだが、水栓業界が住宅着工件数の落ち込みや競争激化で低迷する中、脱下請けを志向し、試行錯誤を経て自社製品のシャワーヘッドにたどり着く。

 節水効果は最大50%、しかも生成する超微細な気泡(直径1万分の1ミリメートル)が、洗浄、保湿、温浴をはじめとするさまざまな効用・作用を及ぼし、ユーザーの美容と健康を増進する。こうした“スグレモノ”のシャワーヘッドを、廃業した水栓メーカーの技術者を迎え入れるなどで開発した。その性能が評価され、今では、一般家庭はもちろん、ホテルなど業務用としても広く普及している同社製品だが、発売当初は売り場をつくれず、売れない日々が続いた。

 「人との出会い、つながりがすべて」。田中社長は、社員30人規模にまで会社が成長・発展した最大の要因として「人」を挙げる。その筆頭が“完売王”の異名を持つ実演販売のプロだ。「誰も売ってくれないなら自分で売るしかない」(田中社長)と完売王に弟子入りし、実演販売のワザを磨く。そのワザを、知り合いの大手ホームセンターのバイヤーの縁で、都内ホームセンターで実践する機会を得る。「毎週、金曜の夜に岐阜から出てきて、日曜の夜に戻る生活を続けた」(同)。その努力が実り完売王をしのぐほどの腕前になると、テレビ出演の依頼が舞い込む。テレビの関係で今度は“ブランドの達人”と知り合い、テレビ効果&ブランディングの威力で「成長というより膨張」(同)の勢いを示し今日に至る。

 実演販売のワザは社員にも伝授され、手分けして首都圏をはじめとする各地で実践中。そうした“売る力”をさらに生かすべく、大都市圏の販路開拓に悩む全国中小企業の営業支援事業にも乗り出した。「お客に100点の満足を与えるのは当然のこと。満足を上回る120点、130点をつけてもらい、凄いねと感動してもらうのが商売です」と商売=感動を説く田中社長は「売ること自体が遊び。面白くなければ続かない」とも話す。

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