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“発電+温熱”の太陽光フル利用システムを世に問う

(16/09/08)

 太陽光から電気と熱を取り出して、新しい生活インフラを提供する−GF技研(静岡県富士市、梅津健児社長)が掲げるビジョンは明確だ。これまで、発電だけに利用されている太陽光を「発電プラス温熱」のハイブリッド型で利用できるようにし、ざっくり言って、既存の太陽電池の2倍の価値を持つ新エネルギーシステムを世に広めようというものだ。「地球規模のエネルギー総量の確保、社会的経済性の点で断トツに優れる」(梅津社長)とするシステムの実用化が、苦節10年の時を経て、いよいよ目前に迫っている。

 同社は大手総合電機メーカーで長年、空調技術・事業に携わった梅津氏が10年前、電機メーカー退社とほぼ同時に創業した。メーカー時代の知見を通して、未来のエネルギーのキーワードは分散型×再生可能×ハイブリッド−の三つだと見極め、太陽光ハイブリッドエネルギーシステムの開発に着手した。未来エネルギーを見通した拠り所の一つに、薪や炭を燃やす熱利用の時代(19世紀)→火力・原子力発電(20世紀)→本格熱利用の時代の再来(21世紀)と歴史は繰り返す、といった技術史観があった。

 同社の新ハイブリッドシステムは、太陽光パネル、蓄熱槽、空調機−の3要素から成る。太陽光パネルでは、発電と熱収集の二つの機能を高効率で発揮できる接合技術と製造方式を編み出して、その製造拠点を台湾に構えた。蓄熱槽は給湯のほか床暖房、冷房、除湿などにも使える複合利用型で、経済性や災害リスク対応性などにも優れている。また、空調機は熱源利用、圧縮機・冷媒フリー(不使用)の、熱と水で冷房を行う世界初の技術に基づくもので、NEDOの援助を得て鋭意開発中。「熱帯地域に多い開発途上国での空調の普及に不可欠なものになると期待している」(同)と海外マーケットもにらんでいる。

 これら各装置の一部は、テーマパークやオフィス、住宅などで導入が始まっている。梅津社長は「三つの装置がバラ売りされて市場が広がっていく」と見通しており、市場開拓に向け、これまでの開発一本やりの体制を改め、事業化、販売、メンテナンスの各体制整備にも乗り出している。創業から10年。飛翔の時を迎えた同社は、数年後には年間売上高を数百億円規模に伸ばす、といった青写真も描いている。

 FIT(固定価格買い取り制度)からZEB/ZEH(ゼロ・エネルギー・ビル/ゼロ・エネルギー・ハウス)へ−。今、政府や自治体のエネルギー政策は転換期にさしかかり、補助制度の見直しなどが具体化している。梅津社長は、こうした動きを「発電推奨から新エネ効果推奨へと大きな転換が図られており、ハイブリッドが優位に立つ」と強い追い風と捉えている。緑の新天地=グリーン・フロンティア(GF)に向かって、GF技研が走り出した。

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