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あるといいな−の学生服リユース店を全国に拡大

(16/08/17)

 「身近な『困った』を解決する」「あるといいな、を有らしめる」。起業とくに女性が業を興す際の“黄金律”ともなるのが、自分自身のニーズ、ウオンツを事業のタネとすることだろう。サンクラッド(高松市、馬場加奈子社長)は、ズバリ、馬場社長の困った、あるといいなから立ち上がり、誰もが「うまくいくわけがない」と見下したその事業は、今、全国各地に広がった。

 誰もが「うまくいかない」と判断した事業とは、子どもたちの制服のリユース、つまり学生服やセーラー服を買い取って販売するビジネス。3人の子を持つシングルマザーの馬場さんは、高価で、すぐに着られなくなる制服を買い揃えることの大変さを痛感。勤め先の職場でも、多くの同僚が同じ悩みを抱えているのを知る。さらに、昭和の時代は当たり前だった「おさがり」を融通し合うような風土が、少子化や近所づきあいの希薄化などからなくなってしまったことも大変さに輪をかけていると見抜く。

 「よし、それなら制服リユースのショップを開こう」。家庭の事情から「起業しなければ」と考えていた馬場さんは2011年1月、高松市内にリユース店「さくらや」をオープンする。だが、数カ月の間、店には誰もやってこない。それでも毎日、寒い中、子供たちとチラシをポスティングして回り、ブログを一日10回更新し続ける。ある日、一人の客が来て「こんな店が欲しかった」とつぶやく。その日を境に状況は一変。メディアが次々、取材に訪れ「さくらや」の認知度は急激に高まり、リユース事業は成長軌道に乗る。

 四国・高松で立ち上がったこのニューサービスは、メディアやブログの情報発信などから、やがて全国区の取り組みへと発展する。「さくらや」を知り、同じような店を開きたいといった人たちが各地に出現。現在、北は仙台から南は宮崎まで、十数店舗(準備中を含む)のさくらやパートナー店を構えるまでになっている。馬場社長は、パートナー店を都道府県すべてに設置する全国制覇を目指す一方で、「さくらや婦人会、お母さんネットワークを結成し、新しいことに挑戦したい」と、未知なる取り組みにも意欲も燃やしている。

 制服のリユースに際し、制服に付いている刺繍を外す作業が必要になったりする。同社では、そうした作業を近所の裁縫上手のおばあちゃんに一個200円で頼んだりする。そんなことから、馬場社長は「おばあちゃんの生きがい支援に役立つなど、地域に根ざしているのが私たちの仕事」と、同社の取り組みが地域密着型であることを強調する。ここへきて、馬場社長には講演依頼が舞い込むようになった。「講演、大歓迎。どこへも行きます」と話す馬場社長は、パートナー店と同様、講演での全国制覇も目指している。

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