証券取引所公式解説

AIMの概要
〜ロンドン証券取引所上場という選択〜

 第7回 「報告会計士」
AIM
ロンドン証券取引所   阿部 直光

 今回はAIM上場プロセスにおける報告会計士(Reporting Accountant)の役割について解説いたします。


報告会計士の役割概観

 会計事務所はAIM上場プロセスにおける主要な役割を担い、過去の財務情報、将来の財務予想情報を含む数々の領域でそのリビューや報告に対して責任を持ちます。AIM上場プロセスの持つ特異性とその綿密性に経験を持つことに加え、財務エクスパートしての会計士の経験は、経営陣が、AIM上場に支障をきたすであろう問題点を早期に確定し、解決策を見出すことに大きな手助けとなります。また、上場結果に対して特に既得利害を持たないことから、上場プロセスにおいて付加価値の高い独立した意見をもたらす存在です。時には、その独立性によってもたらされる忌憚のない、信念のある強固な意見表明は企業に煙たがられることもあります。

 企業の役員はAdmission Document作成に関して膨大な負担を負っており、会計士は多くの領域で彼らの負担を軽減するようサポートします。実際、Admission Documentの裏付けとなる「充分かつ慎重な調査」を行う過程で極めて重要な役割を果たします。


Reporting Accountant(報告会計士)の資格条件

 AIM上場は「AIM Rules for Companies」と「AIM Rules for Nominated Adviser」によって規定されており、企業向けルールでは、Schedule Twoと呼ばれる箇所で規定されている形式、内容に沿ってAIM Admission Documentを作成するよう義務付けています。

 Reporting Accountantの資格要件はAIMルール、その他の法律で明確に定義されているわけではありませんが、過去の財務情報に関して、その会計士レポートの中で、「真実かつ公正」な意見表明が求められることから、通常は英国で監査人資格も持つものが適当であると考えられています。

 そのようなプロの資格要件以外で、Reporting Accountantを選択する際の最も重要な決め手は、組織、チームメンバーがAIM上場プロセスに従事した実績を持っていることです。結果的に、既存の企業の監査法人が自動的にReporting Accountantにふさわしいというわけではありません。NOMADは、企業がアドバイザーを選択する際に入念に審査し、予定されるアドバイザーの組織、あるいは個人レベルで何か問題がないか、チェックします。


企業構造

 上場予定企業を早い段階で入念に審査することは不可欠です。法的観点から企業の定款が株式の上場を認めているかは重要な点になります。上場予定企業はグループ持株会社である場合が多く、原則的には持株会社傘下の子会社株式を保有しており、その主要な事業は取締役会の選任、配当の公示と支払い、時にはグループ企業全体の借入枠に対する主たる借り手となること等です。上場準備以前に既に持株会社を構成しているケースも多く見受けられます。既存の持株会社を上場させるか否かは、以下のような要因を考慮しなければなりません。

 1. 持株会社は配当支払い余力があるか。言い換えれば、分配可能積立金に著しい不足金は生じていないか。
 2.過去の事業内容から、将来的に偶発債務が生じる可能性はないか。

 これらの問題を解決するために新しい持株会社を設立し、上場させる場合もあります。もちろん、既存株主やグループ全体に対する租税効果を配慮する必要があります。上場するのが大企業の子会社、あるいは上場前に分割される事業の一部であったりする場合は、それが現実的であるか、予想される事態であるかにかかわらず、他の異なる問題にも充分に注意が払われるべきです。契約、事業、財務上の観点から事業を成功裡に分割するのに費やす時間を低く見積もることは簡単ですが、充分な安全措置、例えば、覚書をかわしたり実務手続き書を作成しておくことは非常に有効です。


財務ストラクチャー

 企業が複雑な資本・財務構造を持っている場合、往々にして過去のマネジメント・バイアウトやプライベートエクイティファイナンスによる資本増強の結果である場合が多いのですが、大幅なリストラクチャリングが必要です。資本構造の簡素化によって、上場時に余計な心配を投資家にさせないことが大切で、企業の将来にとっても透明性が高まることにつながります。加えて、上場時に資金調達を伴う企業は、上場直前、あるいは、直後に継続的な資金調達を必要とするケースがよく見られます。従って、現在、未来の資金調達ニーズを充分に検証する必要があります。


Financial Reporting(財務レポート)

 上場を目指す企業の中には監査を受けていない企業もあり、その時には、Reporting Accountantが過去の財務諸表について全面監査を行うことになります。もし、過去の書類が紛失等で入手出来ない場合は、問題です。よって、AIM上場を目指す企業で監査を受けていない場合は、不必要な上場手続きの遅延を防ぐためにも監査を受けることが望まれます。AIM Admission Documentの中に挿入される財務情報を正確、かつ適時にアップデートすることで、上場プロセス後半になって著しく時間を節約することが可能になります。企業の役員によって準備、提示された過去の財務情報に関して、真実かつ公正な意見表明をすることに加え、Reporting Accountantは、AIM Admission Documentの中の財務情報を準備、表示する際に役員に対してアドバイスをします。その際に、よく問題となるのが以下の点です。・・・


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