証券取引所公式解説

AIMの概要
〜ロンドン証券取引所上場という選択〜

 第6回 「ブローカーの役割」
AIM
ロンドン証券取引所   阿部 直光

 今回はブローカーの役割について解説いたします。

 ブローカーは資金調達、投資家との良好な関係を構築、維持することに責任を持ちます。AIMルールからの観点では、企業の株式のための市場の構築、維持を図るということになります。


ブローカーに関するAIMルール

 2007年2月に改定されたAIMルールでは、ブローカーを「ロンドン証券取引所のメンバーファームであるパートナーシップ、コーポレーション、法人、個人開業者」と定義しています。ロンドン証券取引所ではAIMビジネスを実践する全てのブローカーリストをウェッブサイト上に掲載しております。

 AIMルール35はAIM上場企業は常にブローカーを指定し続ける義務があることを明記しており、AIMルール17では企業に対して、ブローカーが辞任、あるいは解任、または任命した時には即座に通知することを義務付けています。

 AIMルール35の主要目的は、AIM上場株式が流通する市場でのブローカーの役割を明確にすることです。AIMルールは特に登録マーケットメイカーがいない場合にマッチング業者を探す最大限の努力を行うことを要求しています。ブローカーは、上場株式が秩序ある市場で取引されることをサポートしなければ、ロンドン証券取引所によって取引が一時的に中断される結果になってしまいます。


プライマリー市場での役割

 AIMルールがブローカーの選定を義務付けていることは前述しましたが、ブローカーの仕事は上場前から始まっているのです。AIM上場を目指すほとんどの企業が、ビジネスを成長させるためのエクイティ資本を必要としており、ブローカーは資金調達プロセスの中で指導的な役割を果たします。経営陣が外部資本の必要性を認識し、上場を考え始めると同時にブローカーと作業を始めるのが理想的です。


ブローカーの選定

 各個別企業がブローカーに求めるサービス内容は異なり、提供されるサービスの内容も多岐にわたります。ブローカーの選定基準は企業によって異なると思いますが、大体の目安で言えば、資金調達実績、特に同業セクターにおける実績、加えて機関投資家、および個人投資家に対する強い影響力等を考慮してショートリストを作成するのが有効と考えます。ほとんどのブローカーは、過去の取扱い実績、資金調達規模、他のブローカーとの協力関係、機関投資家ファンド、個人投資家との関係等に関する情報を公開しています。リスト作成後は、個々のブローカーと一対一でミーティングを行うのが好ましいと考えます。

 企業はブローカーの価格決定システムも考慮する必要があります。ブローカーとの関係は長期的なものであることを考えると、サービス範囲、相性、上場後のサポート体制、担当者等が選定をする上で重要な要素となります。

 企業サイドはどの程度の資金調達を目指すのかを明確にしておく必要があります。そのことで、企業が目指す資金調達額をアレンジ出来るブローカーへの絞込みが可能になります。この段階で、ブローカーは企業が上場で予定する資金調達額をアレンジ出来るか初期評価を提示しなくてはなりません。

 この初期評価は、企業固有の問題、あるいは市場特有の問題の両方を考慮したものになります。

 1.企業の過去の財務実績
 2.企業の予想パフォーマンス
 3.取締役会、上級管理職の評価
 4.企業のコーポレートガバナンス水準
 5.ビジネス計画と予想投資収益
 6.セクター分析と同業他社比較レビュー
 7.企業の競争力分析
 8.新規上場に対する市場センチメント

 これら初期分析の結果、上場条件が必ずしも良好でなければ、ブローカーは上場に異議を唱える場合もあります。そのような場合、ブローカーは他の調達手段を提案し、時期が来るのを待つ手助けをすることになります。

 企業とブローカーが上場を決定してからブローカーの主要業務は始まります。ほとんどのAIM企業は、その規模、一般公募募集にかかる費用などから、「placing」と呼ばれる方法を採用するのが一般的です。PlacingではAdmission Documentを使用し機関投資家、富裕個人投資家などプロの投資家への販売が行われます。


ブローカーとの契約 − The Engagement Letter(契約書)

 ブローカーと企業との間の取引内容やブローカーの業務範囲などは契約書の中に全て明記されます。上場時の資金調達額に対するコミッション、上場後の継続サービス費用のアウトラインなどが盛込まれます。コミッションは調達される額や企業の種類などによって大きく異なります。例えば、海外企業は資金調達に関わる追加的な業務等によってプレミアムを支払う傾向があります。


The Placing Agreement

 上場プロセスが進む段階で、企業とブローカーはPlacing Agreementを締結しますが、通常はengagement Letterと差し換えられることになります。この契約はPlacingに関するより細かで正確な取引条件や、どのように実施されるかまで規定しています。この契約の下、ブローカーは企業をプロモートし、資金調達業務を引受けることに同意します。この契約は、Admission Documentの中で開示された情報や企業がブローカーに渡した情報に関してブローカー自らを保護するために保証、免責条項を入れるのが通常です。企業、役員、あるいは支配株主がそれらを保証することになります。この同意契約は・・・


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