証券取引所公式解説

AIMの概要
〜ロンドン証券取引所上場という選択〜

 第5回 「コーポレートガバナンスと上場プロセス 」
AIM
ロンドン証券取引所   阿部 直光

 今回はコーポレートガバナンスの解説から始めさせていただきます。

 非上場企業では、株主が一人、もしくは少人数である場合、往々にして本業に傾ける注意ほどには株主に対する努力を怠っているケースが少なくありません。全ての企業、とりわけ上場企業は、全ての株主の利害が守られ、株主と経営陣の利害関係が一致するように努力することが肝要です。例えば、上場企業における報酬制度は、企業全体のビジネスを発展させるように従業員の労働意欲を促進させるものでならなければならない反面、当該企業のビジネス、売上げ規模等に即した制度でなければならず、通常は報酬委員会を設置して監視しております。また、社外株主の利害を代表すべく社外取締役を置くことが望ましいと考えます。

 非上場企業が、最初から充分なコーポレートガバナンス機能を持つことは容易ではありませんが、最も重要なことは、最低限求められるコーポレートガバナンスの水準というものがあり、経営陣の中に率先垂範してベストプラクティスの実践を可能にする為に必要な手続きを積極的に採用する人が存在することです。


事業の実行可能性

 中小企業経営者の経営能力に関わらず、長期的に、抜本的に欠点のないビジネスモデルを構築することは容易なことではありません。長期的な事業の実行可能性を評価する際に、NOMADは投資家同様の質問をすることになります。NOMADは過去の実績、商品、顧客、サプライヤーに照らし合せ、事業の長期実行可能性を検討します。

 成長著しい産業セクターの中で利益を順調に伸ばしている企業は、一見して、有望なAIM上場予備軍と言えます。まだ利益が出ていない企業でも、一定期間の内に利益が出る確信をNOMADが持てれば問題はありません。

 成功するビジネス、あるいは成功する可能性のあるビジネスというのは、なにも成長セクターだけにあるものではありません。セクター自体が急激に成長鈍化している場合を除けば、投資に値する企業はあるはずです。重要なのは、当該セクターの中で企業が占めるポジショニングです。

 経営陣は成長に向け事業をコントロールする能力が問われます。規模の小さい企業では、企業自体ではコントロール出来ない事象に直面することもあります。可能であれば、企業の商品、サービスは、その品質、サービス内容、技術の革新性、ブランド力で差別化が図られるべきと考えます。ブランドの持つ強い商標権によってプロダクトにプレミアム価格を付けられれば理想的です。取扱いプロダクトやサービスがノーブランドの場合は、その市場で際立ったサプライヤーであるか、非常に効率的な事業会社であるか、ニッチな市場を支配しているか、等が重要と考えます。

 例えば、テクノロジー系の企業であれば、特許や著作権によって保護された知的財産を保有するとか、そのプロダクトを独特の製品に成し得るノウハウを有するといった理由で魅力的な企業になります。もちろん、そういった企業は、特許やテクノロジーの専門家のデューディリジェンスを受けることになります。また、企業は単一のプロダクト、サービスに過度に収益を依存することは望ましくありません。プロダクト、サービスのファミリー化、しっかりとした新製品のパイプラインがあることが望まれます。

 極めて稀なケースを除いては、少数のクライアントに過度に依存することは避けるべきです。ある種の製品、部品、サービスはごく限られたサプライヤーからしか入手出来ないケースもあります。経営陣は常にサプライヤーや部品を変える可能性を意識する必要があります。AIM上場を目指す企業は、主要サプライヤーが供給出来なくなった場合、あるいは何らかの理由で取引を打切られた場合でも、事業を継続することが出来ることが必須条件です。

 地下資源関連企業には違った条件も適用されます。ご存知のように、地下資源関連企業の多くがAIMをその上場市場に選択しています。そのような企業にとっては、経営陣の過去の経営実績が、専門家の鑑定レポート同様に非常に重要な要素となります。


投資家の観点

 AIM上場を目指す多くの企業は、優秀な経営陣を有し、実行可能なビジネスモデルを持っていますが、企業の経営者が受入れ可能な市場価格で投資家が投資する用意がなければ資金調達は成功せず、結果としてAIM上場も企業にとって最適な選択肢でなくなります。よって、NOMADは、既存の株主が受入れ可能なバリュエーションで資金調達が充分に可能であることを確信する必要があります。NOMADは市場環境をよく踏まえ、様々なブローカーの意見を取入れることで、資金調達が成功裡に終わるか、判断することになります。


運転資金

 NOMADは、長期的に成功し、投資家にバリューをもたらし、その目的を達成するに充分な運転資金がある企業だけをAIMに上場誘致します。

 それでもなお、AIM Admission Documentに中には、取締役の意見表明として、上場日から向こう12ヶ月間の充分な運転資金があることを記載しなければなりません。1995年のAIM創設以来、AIM上場を目指す企業数は著しく増加傾向にありますが、上場する企業に占める新興企業の割合は減少する傾向にあります。

 運転資金に関わる記述は、AIM Admission Documentの中でも最も重要な項目になります。その重要性を鑑み、会計士は、財務予想に対する詳細なデューディリジェンスを実施することが求められており、彼らの意見表明の中で、運転資金に関するステートメントが「慎重かつ充分な精査」のもと作られたことを確認します。

 既存の事業を抱えるほとんどの企業にとっては、予想と正反対の事象が起こった時や、事業が下り坂になった時にも、充分持ちこたえられるだけの強固な運転資金を確保出来ることを意味します。立上げ間もない新興企業で、仮に売上げがない場合でも、予想範囲内の市場環境で事業を継続出来るだけの運転資金を確保していることが求められます。


上場準備

 AIM上場準備における最も重要な2つのポイントは、・・・


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