証券取引所公式解説

AIMの概要
〜ロンドン証券取引所上場という選択〜

 第1回 「概要」
AIM
ロンドン証券取引所   阿部 直光

 2007年6月4日、ロンドン証券取引所としては初めてのAIM(エイム)セミナーをKBC証券との共催により開催いたしました。当初見込みの100名を大幅に上回る170名近い方にご参加いただき、改めてAIMに対する関心の高さを実感いたしました。

 AIM紹介に先立ち、私自身の略歴を簡単に紹介いたします。昭和63年野村證券に入社、本店営業部、和歌山支店、秋田支店に勤務した後、平成8年10月に退社、米国でMBAを取得後、富士銀行NY支店、クレディ・スイス・ファーストボストン証券東京支店、ロンドン支店を経て平成16年1月よりロンドン証券取引所に勤務しております。ロンドン証券取引所では国際事業開発部において日本、韓国、モンゴルを担当、全ての商品について地域統括責任者をしております。

 ロンドン証券取引所は2004年10月に英国以外では初めてのオフィスを香港に開設、インド、パキスタンを除く全ての環太平洋地域をカバー、私も2005年8月より香港にて勤務しております。

 それではAIMの概要についてご説明いたします。AIMは1995年に創設された成長著しい中小企業向けの新興市場であり、英国のみならず世界各国の企業がその資金調達の場として活用しています。1990年代にはAIMをはじめパリのヌーボー・マルシェ、フランクフルトのノイエ・マルクトといった新興企業向け市場が相次いで登場していますが、その中で現在まで存続しているのは事実上、AIMのみとなっています。最近では、ルクセンブルクがAlternextという新しい市場を創設していますが、AIMを脅かす存在にまでは至っておりません。

 2007年7月末時点でAIMに上場している企業は1,673社、うち英国企業は1,345社、海外企業は328社となっており、時価総額合計は1,081億ポンド、現在の為替レートで換算すると25.3兆円、ジャスダック証券取引所の約2倍の時価総額に相当いたします。不動産、一般金融、地下資源関連、サポートサービス、投資ファンド、IT&情報テクノロジー、バイオテクノロジー等、38セクター、92サブセクターより構成されています。冒頭でご紹介いたしましたパリのヌーボー・マルシェ、フランクフルトのノイエ・マルクトといった他の新興企業向け市場が存続出来なかった理由の1つとして、ITセクターに偏重していたこと、結果としてITバブル崩壊の影響を著しく被ったことが挙げられますが、AIMの場合は、広範なセクター構成によって影響が軽微に止まったことが功を奏したと言えます。

 添付しました表は、1995年以降の年次別上場数の推移を表しています。この表からもお分かりのように、2004年を境に上場企業数が飛躍的に伸びているのが見て取れます。この背景として幾つかの理由が考えられますが、第一に米国で2002年7月サーベインズ・オクスレー法が制定されたことで、数多くの米国企業が国内市場を敬遠、AIMに上場し始めたこと、第二に、ロシアを筆頭に旧共産主義諸国であった中東欧の国々が冷戦終結後、着実に経済力を復活し、結果としてこれら諸国からの多くの新興企業が資金調達の場としてAIMを選択し始めたこと、第三に、中東諸国からの企業の台頭、第四に、中国をはじめとするアジア諸国の新興企業がAIMに上場し始めたこと、等が挙げられると考えます。もちろん、こうした多くの企業が数ある新興市場の中でAIMを選択している理由は、後述いたしますユニークな上場システムがあることはいうまでもありません。

  Number of admissions
  UK nternational Total
19/06/1995      
1995 120 123
1996 131 14 145
1997 100 107
1998 68 75
1999 96 102
2000 265 12 277
2001 162 15 177
2002 147 13 160
2003 146 16 162
2004 294 61 355
2005 399 120 519
2006 338 124 462
2007 to Jul 123 51 174

 お気付きかも分かりませんが、1995年以降、上場した全企業数は2,838社、内訳は英国籍企業が2,389社、海外企業が449社となっており、現在の上場企業数1,673社と約1,200社の違いになります。この1,200社近い企業の内訳は大別して4タイプ、第一はロンドン証券取引所のメイン市場に上場替えしたケース、第二に他企業より買収されたケース、第三に後述いたします指定アドバイザーとの契約を継続出来なかったケース、最後に上場を自主的に廃止したケースです。

 次に添付いたしました表は年次別の資金調達額合計を表しています。1995年以降の資金調達額累計は513億ポンド、約12兆円の資金がAIM上場企業によって調達されていますが、2003年度以降、急速に伸びているのがお分かりかと思います。IPO時における平均資金調達額も直近の2年間で著しい上昇を見ています。例えば、2003年、2004年、2005年度におけるIPO時の平均資金調達額は、それぞれ1500万ポンド、1000万ポンド、1700万ポンドであったのが、2006年度は3400万ポンド、2007年度7月末現在では3800万ポンドにまで上昇しています。この背景には不動産関連企業、または不動産、公共インフラファンド等の上場数が増加するに伴い、一件あたりのIPO規模が大きくなっていることに関係しています。これを裏付けるようにIPO時の平均時価総額も2003年度の3000万ポンドから直近7400万ポンドまで上昇しています。

  Money raised £m
  New Further Total
19/06/1995      
1995 69.5 25.3 94.8
1996 514.1 302.3 816.4
1997 344.1 350.2 694.3
1998 267.5 290.1 557.6
1999 333.7 599.8 933.5
2000 1,754.1 1,319.7 3,073.8
2001 593.1 535.3 1,128.4
2002 490.1 485.8 975.8
2003 1,095.4 999.7 2,095.2
2004 2,775.9 1,880.2 4,656.1
2005 6,461.2 2,481.2 8,942.4
2006 9,943.8 5,734.3 15,678.1
2007 to Jul 4,663.1 7,039.0 11,702.2


 次回はAIMの流動性、セクター構成等について詳しく解説していきたいと思います。


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