会社を良くする「経営の教科書」
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経営の教科書
(2017.3.27)

第77回 地方創生と日本的M&A

 皆さんは企業継続の「意味」や「価値」を正しく把握されていますか?多くの企業経営者、特に中小零細企業の経営者の皆様は自社が維持・継続、発展していくことの意味や価値を誤解しているように感じて仕方ありません。そう思う理由は、あまりにも多くの経営者が自社の「出口戦略」の検討を先送りにする傾向があるからです。

 改めて経営者の皆様にお考え頂きたいのは、皆様の会社が実に多くの人々の生活を支えているという現実です。自社の社員とその家族はもちろん、取引先の社員やその家族の生活も程度の差こそあれ御社のお陰で成り立っています。更に視野を広げれば、社員やその家族が通うお店やスーパーもあなたの会社がなくなれば何らかの打撃を受けるのです。

 中小企業白書によると、倒産・清算の件数を合わせると年間3万件以上の企業が消滅しているそうです。一件平均20名の雇用があったとすれば、単純計算で年間60万人の雇用機会が失われていることになります。特にこの影響が顕著に出るのが地方です。都心部では企業の新陳代謝が期待できますが、地方において失われた企業の穴埋めは考えにくいのが現状です。

 裏返して言えば、地方が疲弊する原因の大きな一つに、後継者不在を理由に地方の企業が清算してしまうという問題があるといえます。近年取沙汰される「地方創生」というテーマに向き合うためには、この問題の解決策を模索しなければならないのです。

 以前お伝えしたように、ゴーイング・コンサーン(永続的発展)を前提とした企業の出口には「事業承継」と「M&A」しかありません。その場合、後継者不在の企業にはもはや「M&A」という選択肢しか残らないのです。

 後継者がいないから「清算」と結論付けるのではなく、自社が継続することの意味や価値を深く認識して頂き、企業を永続的に発展させる為の道を探ることも経営者にとっての重要な仕事です。同時に、地方経済が沈んでは日本経済が加速度的にシュリンクすることは火を見るより明らかです。企業の新たな発展の糸口を地方企業との同盟に見出せないか?と考えることも未来に向けた重要な経営者の仕事といえます。そのような視点で、是非御社の現状と出口戦略を見直してみて下さい。