会社を良くする「経営の教科書」
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経営の教科書
(2016.12.22)

第71回 企業の出口戦略について(3)

 今回は企業の出口の中から「事業承継」と「M&A」の違いについてお伝えします。両者を簡単に比較すると次のような表現ができるかと思います。順次内容を確認していきます。

事業承継M&A
(1)印象が良い(日本の伝統)印象が悪い(誤解による)
(2)比較的早期に継承者が決まる後継社が見つかるか不確定
(3)企業価値を引き下げるプランが必要企業価値を高めるプランが必要
(4)承継後も責任が残る承継後は責任から開放される
(5)相続と合わせたプランニングが必要M&Aのみでプランニング可能
(5)後継者の資金調達支援が必要後継社の資金調達支援は不要
(6)創業者利益は退職金創業者利益は株式譲渡の対価
(7)主な外部相談相手は税理士や銀行主な外部相談相手は銀行かコンサル

 (1)の印象については、皆さんはどうお考えですか?一般的に私達が耳にするM&Aの話題は、強者が弱者を飲み込むといった話や、単なるマネーゲームとして受け止めざるを得ないような事例が多く、あまり好意的な印象をお持ちの方は少ないかもしれません。

 一方で、事業承継は「家督を継承する」という日本の伝統的継承手段であり、周辺に対しても「会社を第三者に譲渡した」というよりも口にしやすく、耳障りも良い印象があります。

 しかし、M&Aという外来語の印象は別としても、日本人は古来より「和を持って尊しとなす」と聖徳太子が唱えたように、相異なる2つの文化や伝統を統合し、より付加価値の高いものへと止揚することは私達の先祖のお家芸でした。

 事業を継続することに価値を見出すとするならば、欧米型のM&Aを印象が悪いと批判するのではなく、改めて「日本人的なM&A」を再定義し、広く世界へ広めていくことも私達企業経営者や職業会計人の目指すべき課題なのかもしれません。

 次回は引き続き、(2)〜確認してまいります。