会社を良くする「経営の教科書」
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経営の教科書
(2016.12.08)

第70回 企業の出口戦略について(2)

 前回、企業は一旦誕生すると(1)上場、(2)事業承継、(3)M&A、(4)清算、(5)倒産の「5つの出口」を選択する必要が有ることを説明しました。一つ一つの詳細を考える前に、今回はそれぞれの出口の概略について確認したいと思います。

 5つの出口は、まず2つに大別出来ます。現在の経営者までで企業としての役目を終える場合と、現在の経営者以降も継続していく場合です。前者が(4)清算、(5)倒産であり、後者が(1)上場、(2)事業承継、(3)M&Aということになります。

 (4)清算と(5)倒産の違いについて詳述しませんが、倒産はなんとしても避けなければいけない出口であることは言うまでもありません。一方、清算ですが、これは簡単に考えている経営者が多いという実感を持っています。次回以降触れますが、清算することは結構大変なことです。

 このコラムでは、一貫して全ての企業が共有するテーマはゴーイング・コンサーンであるとしてきました。とすれば、(1)〜(3)が具体的に考えるべき出口となりますが、結果論から言えば、(1)上場については、現在上場企業数が約3,000社、全国の企業数が約300万社となっています。上場は0.1%の狭き門となっているが現実です。

 となると、現実的には多くの中小企業にとっての選択肢は(2)事業承継と(3)M&Aに絞られざるを得ません。この2つの出口の違いは、後継者の有無です。M&Aに関しては多くの誤解と偏見が有るようですが、後継者がおらず、それでも企業を未来へと引継いで行こうと思えば、M&Aという方法は決して悪い方法ではありません。

 事実、日本の7割近くの企業に後継者がいないことが事実であり現代の社会問題となっています。後継者がいないのならば清算すればいいのでは?と安易に考えないで下さい。そこで働く人(雇用)、地域経済への効果、その企業が築き上げてきた歴史・伝統・技術等は、清算という出口では失われてしまいます。改めて、企業が継続することの社会的な意義をそこに感じるのです。

 次回以降、(1)〜(5)のそれぞれの出口について、更に詳しく掘り下げていきます。