会社を良くする「経営の教科書」
経営の教科書
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第35回 推移(線)から見える、点では見えない真実


 会社の決算書は、決算日における貸借対照表と、一会計期間における損益計算書で構成されているのは御存知の通り。つまり、常に動いている経営をある時点で財務状態として切り取ったのが決算書と言える。

 その決算(点)を例えば5期分集めてきて、いくつかの勘定科目を自由にピックアップし、その5年分の推移をグラフ化すると様々な気付きを得る事ができる。

 例えば、

 売上が毎年伸びているのに、粗利益は減少しているとする、これはつまり付加価値が減少している証拠だ。ブランディング戦略を見直そう! とか、売上は減少しているのに交際費が増えているじゃないか! なんのための接待なのだ? とか、売上の伸びよりも人件費の伸び率が高い、これは生産性が落ちているからか? 人事戦略の見直しが必要か? とか、借入残高は増加しているのに現預金残高は減少している…、このまま進むと会社は後3年持たないぞ…。とか、売上が減少しているのに売掛金が増えている? 回収条件はどうなっているんだ? とか…。言い出せばきりがない。

 実践して頂ければ気づいてもらえるが、このグラフ化は決して過去の実績を見るだけでは収まらない。このまま行くとどうなるか? という未来を描く材料にもなる。確かに経営環境が激的に変化を続ける渦中にあって、過去の実績があてにならないという指摘はその通り。過去延長線上に未来はない。しかし、一方で経営者自らが未来に目を向けるためには、過去の事実を直視することは必須である。

 早速、自社の5年分の決算書を引っ張りだしてグラフづくりを始めよう。わからなければ航海士である会計事務所に尋ねてみよう。