税務調査の法的知識
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第51回 書面添付制度とは何か?
(16/01/07)

 書面添付制度は平成14年に施行されてから、その名はよく知られているものの、実際に活用されている割合は非常に低いものとなっています。この1つの要因として、書面添付制度の「メリット」が知られていないことが挙げられます。書面添付とは、具体的にどのような制度なのでしょうか。

 書面添付は、税理士法第33条の2に定められた制度ですから、税務署が税理士または税理士法人に対して行うものであって、納税者に対して行う税務調査(質問検査権の行使)ではありません。まず、この理解が重要です。

 書面添付制度の概略・流れは、下記のようになっています。

申告書に書面添付(税理士法第33条の2)
→ (無予告調査でない限りは)意見聴取を行う(税理士法第35条)
→税務調査に移行 または 調査省略(この場合は省略の旨の書面が発行される)

 なお、ここで重要な事実は、意見聴取が行われてから、税務調査が省略になる割合が年々上がっているということで、2014年12月の「東京税理士界」で公表された「税務調査アンケート」の結果を見ると、法人税に対する意見聴取に対して、税務調査の省略率が65.1%(実地調査移行率:34.9%)となっているのです。この数字だけを見ても、書面添付のメリットが大きいことがわかります。

 また、意見聴取が行われ、その中で非違があったとしても、意見聴取の結果として提出した修正申告(の本税)に加算税は課されません。

 なぜなら、上述のように、意見聴取はあくまでも税務調査ではないので、国税通則法第65条第5項が適用されるからです。

 加算税が課されないという観点から考えても、書面添付を行うメリットが大きいことがおわかりいただけると思います。