税務調査の法的知識
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第49回 個人の通帳を見せなければならないか?
(15/12/03)

 税務調査において調査官より「個人の通帳を見せてください」と要請されることに対して、少しおかしいとは思いながら、明確な根拠をもって反論できない方も多いようです。では、税務調査で要請があれば、個人の通帳は見せなければならないのでしょうか?

 まず、根拠条文の確認です(カッコ書きを除きます)。

国税通則法第74条の2
国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、所得税、法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。

 ここで注意が必要なのは、【その者の事業に関する】帳簿書類等を見せなければならないということです。

(1)個人事業主の場合

 個人に対する調査において、例えば事業用の通帳と生活用の通帳が明確に分かれていた場合、生活用の通帳を見せる必要はまったくありません。

 なぜなら、繰り返しになりますが、【その者の事業に関する】通帳を見せる必要(義務)があるのであって、生活用の通帳はここに含まれないからです。

(2)法人の場合

 法人に対する調査において、「代表者の通帳を見せてください」と言われた場合、これは【原則として】見せる必要はありません。なぜなら、これも個人事業主と同じ根拠で、「法人の事業に関する」通帳ではないからです。

 ただし・・・法人と代表者で金銭のやり取りをしている場合は、その資金の出所に関して受忍義務があるため、代表者の通帳を見せなければならない場合もあります。これは、法人から見た場合、金銭のやり取りをしているという意味において、代表者個人が反面調査先となるからです。もちろん、資金のやり取りをしている以外の通帳(生活用など)まで見せる必要性はありません。