税務調査の法的知識
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第41回 印紙税に推計課税はない!
(15/08/06)

 税務調査において問題にある論点として「推計課税」が挙げられます。法人・個人事業主に税務調査が入った。しかし、請求書・領収書などの原資帳票類がない(紛失した・破棄されている)・・・一般的には、こういうケースで、推計課税が適用されることになります。

 その一方で、印紙税の税務調査においては、推計課税の適用はありません。なぜなら、法人税法や所得税法上、推計課税の法律規定があるから、税務調査において推計課税が適用になるわけですが、印紙税法上は推計課税の規定がないのです。

 ですから原則として、契約書・領収書などの現物確認しなければ、印紙税を課税することはできないのです。

 その一方で、「課税文書が多い」「事業所が多い」などの理由により、税務調査においてすべての文書を確認することは時間的・物理的にムリ、ということもあるわけです。

 このような場合の調査手法として、例えば1年間のみの課税文書のうち、ある一定以上の金額のものだけを抽出したり、ある事業所に絞ってランダムチェックをするのが通例です。

 その中で印紙相違や印紙の貼付がない文書の割合などを算出して、3年分の印紙納付額を推計することが一般的な調査対応になります。

 納税者にとっても事務負担が大変ですから、推計課税ができない、とわかっていてもそれにあえて応じることが必要になるケースもあるわけですが、だからといって、安易に調査官の推計額を鵜呑みにする必要性はまったくありません。

 推計課税に応じるかわりに、課税対象年数を短くしたり、こちらで集計するなど、交渉は可能なのです。

 あくまでも印紙税は推計課税できない、という事実をどのように主張根拠として用いるかが重要ということです。