税務調査の法的知識
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第36回 無予告調査の事前通知
(15/05/21)

 あまり知られて(認識されて)いないようですが、無予告調査であっても、事前通知が必要とされています。「無予告調査なのに・・・事前通知??」一見すると矛盾しているようですが、重要なポイントです。

 まず、無予告調査であっても、事前通知をすることを明記した規定の確認です。

調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)

の第2章2(3)注(2)には、下記の記載があります。

事前通知を行うことなく実地の調査を実施する場合であっても、調査の対象となる納税義務者に対し、臨場後速やかに、「調査の目的」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」、「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」、「調査対象者の氏名又は名称及び住所又は居所」、「調査担当者の氏名及び所属官署」を通知するとともに、それらの事項(調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等)以外の事項についても、調査の途中で非違が疑われることとなった場合には、質問検査等の対象となる旨を説明し、納税義務者の理解と協力を得て調査を開始することに留意する。なお、税務代理人がある場合は、当該税務代理人に対しても、臨場後速やかにこれらの事項を通知することに留意する。

 まず重要なことは、顧問税理士がいる場合、無予告調査であっても、調査官は調査開始後すぐに顧問税理士に連絡を入れる必要があります(調査官は納税者からの要請があるから顧問税理士に連絡するわけではありませんので注意してください)。

 一方で、上記のように、無予告調査であっても調査官が事前通知内容を明示しなければならないという規定がなぜ置かれており、かつ、なぜ大事なのでしょう。

 それは、(無予告調査ではない)事前通知の場合と同じように、無予告調査であっても事前通知した内容が、いったんその税務調査を規定するからです。

 例えば、事前通知において、調査対象税目が「法人税」と通知されれば、所得税が調査対象ではないことがわかり、所得税に関する質問に回答する義務がないことがわかります。

 ここでもっとも大事なのは、調査対象期間でしょう。

 事前通知を3年としておいて、調査の中で調査対象期間を5年に延ばす(2年追加する)ためには、「非違が疑われることとなった場合において」という要件が必要となります。

 つまり、とりあえず3年分調査しておいて、誤りもないのに5年遡ることは許されません。これは、事前通知があった場合でも、無予告調査があった場合でも同じということです。