税務調査の法的知識
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第30回 質問応答記録書への署名は義務か?
(15/02/18)

 「質問応答記録書とは何か?」にあるとおり、最近の税務調査では書面が作成されることが多くなったのですが、ここでもっとも大事な問題は、作成された「質問応答記録書」に、納税者が署名・捺印をしなければならないのかどうかです。

 「質問応答記録書作成の手引について(情報)」(国税庁 課税総括課情報 第3号 平成25年6月26日)に載っている内容を一部、そのまま転記しておきます。


【署名押印の必要性】
回答者が署名押印を拒否した場合は、どのようにすればよいのか

(答)
 読み上げ・提示の後、回答者から回答内容に誤りがないことを確認した上で、その旨を証するため、末尾に「回答者」と表記した右横のスペースに回答者の署名押印を求めることとなるが、署名押印は回答者の任意で行うべきものであり、これを強要していると受け止められないよう留意する。

 したがって、回答者が署名押印を拒否した場合には、署名押印欄を予定していた箇所を空欄のまま置いておき、奥書で、回答者が署名押印を拒否した旨(本人が拒否理由を述べる場合にはそれも附記する)を記載し、また、回答者が署名押印を拒否したものの、記載内容に誤りがないことを認めた場合にはその旨を記載する。


 ここに明記されている通り、調査官から「質問応答記録書」に署名押印を求められても「断ることができる」のです。なお、別途規定には、「税理士への署名押印は不要」とされています。

 この場合、調査官からの署名要求に対する断り方をよく聞かれるのですが、これは非常に簡単です。

 「これは任意の文書(行政文書)ですよね?であれば、署名押印しなければならないという義務(法律的根拠)はありませんので署名押印しません」

 任意文書であっても、調査官の要求を断ることに対して、「何か悪いことをしているのではないか?」と感じる税理士・納税者も多いように思いますが、実際のところは国税の内部通達でもこのように「拒否する」ことを認めているのです。