税務調査の法的知識
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第17回 税務調査の対象期間は何年か?(1)
(14/08/05)

 税務調査の実務では、通常「3年」になっている調査対象期間ですが、否認項目が出てくれば「5年」に遡られるケースもあり、脱税だと「7年」と言われるケースもあります。

 税務調査における遡及年数は、実際のところ何年が正しいのでしょうか? 税務調査における遡及年数を定めた法律はありません。一方で、(増額)更正の年数を定めた法律があります。

 税務調査において、誤りがあった場合は、修正申告もしくは(税務署による)更正になるわけですから、調査年数は更正の期間に依存すると考えられます。

 更正の除斥期間は、下記条文が原則となっています(一部省略)。

国税通則法第70条
 次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から5年を経過した日以後においては、することができない。

 つまり原則として、更正は「5年」できるのですから、税務調査の対象年数は「5年」になります。

 なお、一部例外の税目があり、

法人税で純損失等に関する更正:9年(根拠条文:通則法第70条(2))

法人税で移転価格税制に関する更正:6年(根拠条文:措置法66条の4(17))

贈与税:6年(根拠条文:相続税法36条(1))

となっています。それ以外はすべて、「5年」です。

 つまり、通例では3年となっている調査期間も、本当は5年間遡ることができるというわけなのです。3年で済んでいるだけラッキー、というのが事実です。

 ですから、税務調査の事前通知で、当初3年と言われていたものが、否認項目が出てきた関係で、調査官から「調査期間を5年にします」と言われれば、断ることができない、というわけです。

 また勘違いしている方が多いのですが、所得税(個人)は3年しか遡及できない、というのは過去の話です。税制改正で、他の税目と同じく所得税も5年の除斥期間になっています。