税務調査の法的知識
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第14回 留置きは強制か?
(14/06/18)

 国税通則法第74条の7(提出物件の留置き)の規定をみると、調査官は強権的に、帳簿書類等を留置くことができるように読めます。

 一方、この法律規定には事務運営指針が定められており、留置きがどこまで強権的なのかは、この規定を読む必要性があります。

調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)
第2章 基本的な事務手続及び留意事項
3 調査時における手続
(4) 帳簿書類その他の物件の提示・提出の求め
調査について必要がある場合において、質問検査等の相手方となる者に対し、帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)の提示・提出を求めるときは、質問検査等の相手方となる者の理解と協力の下、その承諾を得て行う。

(注)  質問検査等の相手方となる者について、職務上の秘密についての守秘義務に係る規定(例:医師等の守秘義務)や調査等に当たり留意すべき事項に係る規定(例:宗教法人法第84条)が法令で定められている場合においては、質問検査等を行うに当たっては、それらの定めにも十分留意する。


(5) 提出を受けた帳簿書類等の留置き
提出を受けた帳簿書類等の留置きは、
1) 質問検査等の相手方となる者の事務所等で調査を行うスペースがなく調査を効率的に行うことができない場合
2) 帳簿書類等の写しの作成が必要であるが調査先にコピー機がない場合
3) 3) 相当分量の帳簿書類等を検査する必要があるが、必ずしも質問検査等の相手方となる者の事業所等において当該相手方となる者に相応の負担をかけて説明等を求めなくとも、税務署や国税局内において当該帳簿書類等に基づく一定の検査が可能であり、質問検査等の相手方となる者の負担や迅速な調査の実施の観点から合理的であると認められる場合
など、やむを得ず留め置く必要がある場合や、質問検査等の相手方となる者の負担軽減の観点から留置きが合理的と認められる場合に、留め置く必要性を説明し、帳簿書類等を提出した者の理解と協力の下、その承諾を得て実施する。

 なお、帳簿書類等を留め置く際は、別途定める書面(以下「預り証」という。)に当該帳簿書類等の名称など必要事項を記載した上で帳簿書類等を提出した者に交付する。

 また、留め置いた帳簿書類等については、善良な管理者の注意をもって文書及び個人情報の散逸、漏洩等の防止にも配意して管理する。

 おって、留め置く必要がなくなったときには、遅滞なく、交付した「預り証」と引換えに留め置いた帳簿書類等を返還する。

 ここに明記されている通り、留置きというのは何も「強制」ではなく、「質問検査等の相手方となる者の理解と協力の下、その承諾を得て行」われるものであるということです。また、留置きは無条件に行われるものではなく、「やむを得ず留め置く必要がある場合や、質問検査等の相手方となる者の負担軽減の観点から留置きが合理的と認められる場合に」行われるものであることは、きちんと知っておく必要があるでしょう。