税務調査の法的知識
税理士業界にフォーカスした“税務調査の法的知識”
一覧はこちら

第12回 不当な税務調査を訴える根拠
(14/05/20)

 税務調査を行う調査官に質問検査権の権限が与えられ、かつ納税者には受忍義務(罰則規定)があることをもって、税務調査は法的に成り立っているのですが、実はその反面、質問検査権の範囲を逸脱した(不当な・違法な)税務調査が行われた場合の罰則規定はありません。

 ここで、違法性のある税務調査が行われてしまった場合、何を根拠に税務署に訴えを起こせばいいのでしょうか。

 このような場合、税法ではなく、国に対する違法請求になりますから、下記の法律が適用根拠になります。

国家賠償法第1条
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

 国家賠償法は全6条から成り立つ、非常に短い法律なのですが、当然に課税当局に対しても適用になります。

 国家賠償法を根拠にする要件としては、「故意又は過失」ですから、調査官が質問検査権を逸脱するような言動を行った場合には、税務調査の現場で是正を促すとともに、「これ以上不当な税務調査を行う場合には、故意又は過失があったとして、国家賠償法による訴えも辞さないですが、よろしいですか?」と歯止めをかけることが大事になります。

 またもちろんですが、国家賠償法を根拠に、裁判をすることも可能なのです。