税務調査の法的知識
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第11回 調査は犯罪捜査とは別物
(14/05/14)

 税務調査の手続きを規定する国税通則法の中に、1つ特殊な法律規定があります。

国税通則法第74条の8(権限の解釈)
第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 この条文は、質問検査権を規定した法律の直後に定められている、いわゆる包括規定ですが、この条文の通達がないため、解釈については統一見解が出されていない状態です。また、税務調査の手続きを解説した書籍等を見ても、この条文の解釈どころか、条文自体が載っていないことの方が多いのです。しかし、税務調査の実務上は、非常に重要な手続き規定であることに間違いありません。絶対に知っておかねばならない条文なのです。

 広辞苑で調べてみると、「調査」と「捜査」は下記の意味になります。

「調査」:ある事項を明確にするためにしらべること

「捜査」:捜査機関が、公訴の提起・維持のため、犯人および犯罪事実に関する証拠を発見・収集すること

 つまり、この条文が意味することは、税務調査というのは、調査先を犯罪者と決めつけて証拠収集するものではなく、帳簿等を見て所得・税額の計算上、不明点があるからそれを明確にするために、質問または検査をするというのが本質というわけです。

 税務調査の現実を鑑みるに、「何か叩けばホコリが出るだろう」というのは調査ではなく、それが犯罪捜査だとするなら、法律(国税通則法)違反だと言えるわけです。

 調査と犯罪捜査の相違は、確かに明確ではありません。しかし、犯罪捜査と思える調査官の言動があるなら、それは法律違反かもしれないのです。