金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例24「経営計画に沿った卒業基準の判断ポイント」


 金融検査マニュアル別冊の「事例24」に関しては、経営改善策を策定する際に、中小企業再生支援協議会も参画した実現性の高い改善計画に基づき、改革が進められており5年後には正常先区分に上位変化する見込みであることから条件変更により支援している債権に関して「貸出条件緩和債権」には該当しないと判断している事例です。

 ある程度の規模があるホテル業等の経営再建に関しては、売上げ計画や経費削減計画など企業側が単独で考えると「希望的観測」から実現性の乏しい計画になることもありますので、財務リストラを考慮した抜本的な改革を実施する際には、中小企業再生支援協議会や業界に精通した会計士や弁護士等の外部専門家の協力を得ながら、債権者はもとより関係者の支援も考慮しながら綿密に考えなければなりません

 事例のように、装置産業であるホテル旅館業の場合、業績が低迷すると借入債務の負担が直接的に経営に影響を与えることとなります。事業の黒字化を実現すると同時に債務負担の軽減による資金収支改革を実現できるか否かが成否のカギとなりますので、債務の株式化による債務の転換、債務免除等の検討も必要です。地域における再生ファンド等の利用も積極的に検討する必要がありますので、中小企業再生支援協議会との連携により、実現性の高い再建計画を策定することが重要となります。

 また、条件緩和債権に該当するか否かの判断は、監督官庁が示す要件を満たしている必要がありますが、実現可能性の高い、抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合には、当該経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えないとされています。

 外部機関の専門家により策定された計画は予想について十分厳しいものとなっており、当該計画通りの進捗であれば要件を満たしているものと判断されます。また、中小企業支援協議会の支援の下実施された計画については、一定期間経過後に専門家による実施状況の検証を行う必要があるとされていますので、進捗状況のモニタリングについては適切に対応しなければなりません


参考:中小企業再生支援協議会とは…
 中小企業の事業再生を支援するため、平成15年に各都道府県に1箇所ずつ設置されています。各協議会には、企業再生に関する知識と経験を持つ専門家(公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士等)が常駐しています。中小企業の再生に係る相談や、個別チームを組み、企業の再生に対応しています。

 また、産業活力再生特別措置法第41条の規定に基づき、中小企業再生支援業務を行うもとして認定を受けたものが実施する中小企業再生支援協議会事業(中小企業再生支援協議会の設置及び運営並びに支援業務部門による再生計画策定支援等の再生支援業務を実施する事業。)について、その内容、手続き、基準等が定められています。