金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例14「外部要因による一時的計画未達の判定方法」


 金融検査マニュアル別冊の「事例14」に関しては、5年後に黒字化・債務超過解消を目標とした収支計画に基づく条件緩和による支援を行い2年間は計画の9割程度の達成率で推移していたが、スキー場経営という業種特性から季節的要因により今期は計画に対して3割程度しか達成できていない。しかし、来期からは季節対策を講じることで業績は改善する見込みが立っていることから「要注意先(要管理先)」と判断している事例です。

 レジャー産業は、季節的要素や経済状況により売上が大きく変化する業種であり、業績低迷が明確になった場合、改善する可能性はあるのか否か慎重に対応する必要があります。

 ホテル旅館業も同様ですが「土地、建物、資金といったハード」を持っているだけでは利益を上げることはできません。会社が持つソフト(=サービス力)などの経営資源との結びつきを考えた営業活動が重要となります。

 また、レジャー産業を取り巻く消費者のニーズは個性化と高度化がはっきりしてきており、資金と人材が豊富な大企業が常に有利とは限りません。規模は小さくても特徴のあるサービスを提供したり、地域の顧客をしっかりネットワーク化している小規模企業の方が有利となる可能性もありますので、外部環境の変化等も考慮しながら以下の点を常に考慮した経営を心掛けることが重要です。


 また、収支計画を策定する場合には、一般企業とは異なり「外部環境要因」による影響を受ける度合いが高いことから、売上規模に関しては現状維持、20%程度減少、50%減少等、環境変化の可能性に応じた収支見込みを複数検討し、最低収入でも維持できる経営体質に改善することを目標とすることも重要です。

 更に、事業を継続するために外部要因変化への代替策として「デリバティブ保険」等最悪の事態になった場合の補填を確保できるような対策を講ずることも検討しておく必要があるでしょう。

 つまり、レジャー産業に関しては、事例のように一時的な外部要因により業績が悪化し経営改善計画が未達成となっても、過去の取組実績や将来の可能性を総合的に判断し、支援の可否を決めることとなりますので、状況変化に対処できる方策を常に考え、金融機関側へ説明しておく必要があるのです。