金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例11「収支計画の具体性と実現可能性の評価方法」


 金融検査マニュアル別冊の「事例11」に関しては、4期連続赤字で大幅な債務超過状態にあり、返済に関しても元本返済猶予の条件緩和を実施している状況であるが、未だに債務超過は解消されず赤字の状況は続くも策定された経営改善計画に基づき1年目で8割程度を達成し、2年目以降は約定返済も見込まれる状況にあることから「要注意先」と判断している事例です。

 金融機関側の評価としては、事例のように売上減少により赤字が連続し、財務内容も大幅な債務超過に陥っている債務者に関しては、返済能力は認められず「破綻懸念先」の債務者区分と判断せざるを得ません。

 中小小規模企業の場合、綿密な再建計画を策定することが難しいため、金融機関側が主体となって企業側の状況を確認しながら「具体的な改善計画の策定を支援する」ケースもありますが、金融機関が支援することを前提とした経営改善計画の内容が合理的であり、且つ、実現可能性が高いと認められる場合は「要注意先(要管理先)」と判断してもよいことになっています。

 監督官庁の指導の中で金融機関側に求めているコンサルティング機能として、債務者の経営状態を正確に評価し、改善の可能性を見極めた上で債務者の同意を得ながら再建計画を策定することが求められていますので、過去の経営実績や、今後の業界動向も考慮した収支見込みを策定し、当該計画の進捗状況を確認しながら債務者の現況を判断することになります。。

 経営改善計画を策定する際に、基本的に実現すべきポイントとして捉える要素は以下の4点となります。

1.財務体質の改善は可能か… 経営者個人も含め財務リストラできる遊休資産はあるのか?

2.資金収支黒字化への改善は可能か… 赤字体質を脱却できる事業計画を考える事はできるのか、また、可能性はあるのか?

3.主要取引先の協力、関連企業の協力は得られるか… 計画期間中の資金繰りは確保できるのか、大丈夫なのか?

4.最終的に償却前利益による返済は可能か… 債務超過を3〜5年で解消はすることはできるのか、借入の返済は可能なのか?

 金融機関としては、以上の点を考慮しながら、債務者と話し合いを行い実効性のある計画を策定し、定期的に進捗状況を確認しながら対応することが求められています。

 立案した計画ですから100%達成することが目標となりますが、計画の達成状況が未達成であっても、原因が何なのか、翌年以降回復する見込みがあるのか等、定期的に進捗状況として正確な情報を提供することで、総合的に計画は遂行されているという評価を得られる可能性もありますので、金融機関との関係を良好な状態にする努力が重要なのです。