事例5「技術力の評価方法」
金融検査マニュアル別冊の「事例5」に関しては、業績不振により赤字を継続し債務超過に陥っているが、当該社が持つ高い技術力が取引企業に評価され今後安定した受注が見込まれ、業績回復が可能であり、同時に事業の継続性と収益への貢献も見込まれることから「要注意先」と判断している事例です。 |
中小・小規模企業の場合、現在の経営状態が低迷していても企業が持っている高い技術力やサービス性の潜在能力や競争力等を勘案すると、今後の事業継続や業績向上に大きく貢献する可能性を秘めているケースがあります。
金融機関内部における企業評価基準(〜信用格付制度)においても、
債務者との高密度なコミュニケーションを通じて、その経営実態を適切に把握することが重要であり、表面的な財務数値だけではなく、企業の実態面を正確に把握すべく定性面(人・物・金)の評価も反映することが求められていますので、特に、企業が保有している「技術力」等の無形固定資産に関しては内容を十分に確認しておくことが求められています。
無形固定資産として代表的なものには、「営業権(=のれん)」「特許権」「実用新案権」「意匠権」「著作権」等があります。
- 営業権=長い企業活動により形成された無形の価値(超過収益力、信用力、ブランドイメージ)
- 特許権=一定期間、発明を独占的に使用する権利として国が認めたもの
- 実用新案権=物の形や構造、組み合わせに係る考え方等を独占排他的にする権利
- 意匠権=物の形状・模様・色彩のデザイン等創作に関する権利
- 著作権=建築、図形、映画、コンピュータプログラムなどの著作物を排他的に利用できる権利
営業権以外の権利に関しては、
特許の出願など正式な手続きをもって習得されるものであって、幾らよい技術やアイデアを持っていても、権利を取得していなければ保護されません。企業が持つ、技術力やサービス内容が高度であり業界内で評価されているものに関しては権利を保有しているか否か確認することがポイントとなっています。
また、権利を持っていたとしても、
当該権利を活用することで、どのような事業が行われるのか、新たな需要がどれだけ見込まれるのか、売上にどの位貢献できるのか、収益改善が行われるのか否か、実際の営業活動への影響力等を考慮することが必要となりますので、
持っている技術力やサービス力を正しく評価し事業として具体性のある計画を示すことがポイントです。
中小・小規模企業単体では優れた技術を効果的に活用することは難しいため、金融機関は主体的に実用可能性のある企業を探す等、間接的な支援も考えていますので、
技術力の内容を正しく理解してもらえるように日頃から説明する努力をすることも必要です。